共同研究 「イラク戦争を考える」: Thinking About The Iraqi War

慶應義塾大学 経済学部 延近 充 編著 (2004年9月25日公開)

アフガニスタン戦争,イラク戦争を含む「対テロ戦争」がなぜ「終わらない」性格をもつのか,またアメリカのブッシュ政権が国際社会の反対の中でなぜイラク攻撃を強行したのかについてのわたしの見解は,

『対テロ戦争の政治経済学― 終わらない戦争は何をもたらしたのか』(明石書店,2018年3月)をお読みください。

本書の理論的基礎およびより詳しい現状分析について,下記の2冊が参考となります。

2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を国際政治や軍事面を含めて論じた『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』(御茶の水書房,2012年2月,本書の構成と序論),

現在の世界経済の危機的状況と90年代以降の日本経済の構造変化を基礎理論から現状分析まで展開し,平易に説明した『21世紀のマルクス経済学』(慶應義塾大学出版会,2015年7月,本書の目次)
What's New
「対テロ戦争を考える視点―憎悪と報復の連鎖のメカニズム」(2025年延近ゼミOBOG会講演レジュメ,2025.1.10)
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<資料> 終わらない「対テロ戦争」−年表 2003年2月〜 (2025.1.29, 更新)

【欧米でのIS関係のテロ】(2015年〜)

【トランプ政権の政策関連年表2017〜2021年】(2020大統領選挙,バイデン政権によるトランプ政権の政策変更を含む)

[イラク情勢] 【イラク戦争における犠牲者数】
「暴力事件」などによるイラク人の2025年1月の死者5人(28日まで)。
[パレスチナ情勢] パレスチナ問題の経緯については『対テロ戦争の政治経済学』第6章をお読みください。

2025年のパレスチナ情勢年表

過去のパレスチナ情勢年表一覧はこちら

【イスラエル・パレスチナ紛争における犠牲者数】*(1月28日まで)
イスラエル軍のガザ地区とヨルダン川西岸地区への攻撃による
2025年1月のパレスチナ人の死者

1,973人
 うちガザ地区での死者 1,933人
 ヨルダン川西岸地区での死者 40人
 2023年10月7日のハマスのイスラエルへの攻撃以降の
ガザ地区とヨルダン川西岸地区へのイスラエル軍の攻撃による
パレスチナ人の死者総数
 
瓦礫の下に埋まるなどによる行方不明者(少なくとも)
 瓦礫の下などから発見された死者(2025年1月11日以降)
 同上(1月19日の停戦合意発効以降)


 48,779人
10,000人
857人
358人
 うちガザ地区での死者(多数の女性と子どもを含む) 48,087人
 ヨルダン川西岸地区での死者 673人
パレスチナ人の負傷者数 111,563人
10月7日のハマスのイスラエル南部攻撃によるイスラエル人の死者
10月20日のイスラエル軍のガザ地区での最初の地上作戦実施以降の
パレスチナ武装勢力(レバノンのヒズボラ含む)との戦闘によるイスラエル兵の死者
1,200人

 853人
2025年
1月
・ガザ保健省(GMH)が過去48時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は48人(うち37人は瓦礫の下などから発見),負傷者は80人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は47,354人,負傷者は111,563人と発表(28日)。
・国連機関がガザ地区北部にこれまでにパレスチナ人37万5000人以上が帰還したと発表(28日)。
・イスラエル軍がガザ地区で部隊に接近するパレスチナ人集団への警告射撃で誤射によりイスラエル人契約業者1人死亡と発表(28日)。
・レバノン南部ナバティエでイスラエル軍の空爆によりレバノン人24人負傷,レバノン保健省発表(28日)。
・ガザ保健省(GMH)による過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死傷者数の発表なし(27日)。
・ヨルダン川西岸と組北西部トゥルカルムでイスラエル軍の空爆によりパレスチナ人2人死亡,ハマスが2人は軍事部門メンバーと発表(27日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニンへのイスラエル軍の攻撃が継続,ジェニン南方アッシュ・シュハダでイスラエル兵の発砲により2歳のパレスチナ人少女1人死亡,同地区西部ラマラ南方カランディア難民キャンプでイスラエル兵の発砲によりパレスチナ人1人死亡,2人負傷(27日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は23人(うち14人は瓦礫の下などから発見),負傷者は11人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は47,306人,負傷者は111,483人と発表(26日)。
・ガザ地区中部ディル・アルバラでイスラエル軍の発砲により子ども1人含むパレスチナ人2人死亡,アル・アウダ病院発表(26日)。
エジプト外務省がトランプ米大統領が25日にガザ地区の避難民150万人のヨルダンやエジプトへの移送を提案したことに対して,パレスチナ人の定住の権利を侵害し,地域の安定を危険にさらし,紛争の拡大のリスクを拡大するパレスチナ人の一時的または長期的な移送を拒否するとの声明を発表(26日)。
・レバノン南部でイスラエル軍の攻撃によりレバノン人22人死亡,子ども9人含む124人負傷,レバノン保健省発表,26日は停戦合意に基づくイスラエル軍の撤収期限,多くの住民が自分の村に帰還中,ヒズボラは「停戦合意違反と犯罪だ」と非難し,停戦を仲介した米仏と国際社会が責任を負い,イスラエル軍を撤収させるよう要求する声明を発表(26日)。
・ガザ保健省(GMH)による過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死傷者数の発表なし(25日)。
・ハマスが拘束中のイスラエル軍の女性兵士4人を解放,イスラエルはパレスチナ人200人を釈放(25日)。
・トランプ米大統領がイスラエルに対する大型爆弾の供与保留を解除するよう国防総省に指示,MK84無誘導爆弾1800発が数日以内にイスラエルに搬入予定,ニュースサイト「アクシオス」報道(25日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニンでイスラエル兵の発砲により2歳の少女1人死亡,パレスチナ保健省発表(25日)。
トランプ大統領がヨルダンのアブドゥラ国王との電話会談で,ガザ地区は「ほとんどすべてが破壊され,人々が亡くなっている」との認識を示し,150万人の避難民をヨルダンやエジプトに移住させる構想を提案(25日)。
・ガザ保健省(GMH)による過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死傷者数の発表なし(24日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニン南方カバティヤでイスラエル軍の無人機攻撃によりパレスチナ人2人死亡,パレスチナ保健省発表(24日)。
・イスラエルのダノン国連大使がグテーレス事務総長に対して国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)のエルサレムでの業務を停止し30日までに退去するよう要求する書簡を送付したと発表(24日)。
・イスラエル首相府がヒズボラが停戦合意を履行していないとしてイスラエル軍の撤収期限後もレバノン南部に駐留を継続する方針を発表,昨年11月27日に米仏の仲介で発効した停戦合意では60日以内(1月26日午前4時まで)にイスラエル軍とヒズボラのレバノン南部からの撤収を規定(24日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は122人(うち120人は瓦礫の下などから発見),負傷者は306人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は47,283人,負傷者は111,472人と発表(23日)。
・ガザ地区南部ラファ西方地域の民家へのイスラエル軍戦車の砲撃によりパレスチナ人2人死亡,保健省と民間防衛隊発表(23日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニン地域への21日に開始されたイスラエル軍の攻撃の3日目,イスラエル軍とパレスチナ人の交戦によりパレスチナ人2人死亡,イスラエル軍は1月6日にバスへの発砲でイスラエル人3人が死亡した事件の実行者と主張,3日間の攻撃によるパレスチナ人の死者は子ども1人含む12人,負傷者は50人以上(23日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は54人(うち53人は瓦礫の下などから発見),負傷者は19人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は47,161人,負傷者は111,166人と発表(22日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は72人(うち68人は瓦礫の下などから発見),負傷者は56人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は47,107人,負傷者は111,147人と発表(21日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニンでイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも9人死亡,40人以上負傷,パレスチナ保健当局発表,イスラエル軍は対テロ戦争の一環の作戦行動と主張(21日)。
イスラエル政府のスモトリッチ財務相がトランプ大統領のヨルダン川西岸地区のユダヤ人入植者への制裁を歓迎する声明を発表(21日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は122人(うち62人は瓦礫の下などから発見),負傷者は341人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は47,035人,負傷者は111,091人と発表(20日)。
・ガザ地区暗部ラファでイスラエル兵の狙撃により子ども含む2人死亡(20日)。
・イスラエル軍がガザ地区の人口密集地から撤収を開始(20日)。
・ヨルダン川西岸地区北部でIED攻撃によりイスラエル兵1人死亡,1人負傷(20日)。
・ヨルダン川西岸地区中部のパレスチナ人居住の村2カ所をユダヤ人入植者の集団が襲撃し,民家や商店などに放火し発砲,パレスチナ人少なくとも12人負傷,パレスチナ赤新月社発表(20日)。
・イエメンのフーシ派がガザ地区での停戦発効を受けて紅海などでの船舶への攻撃をイスラエルと関連のある船舶に限定すると発表(20日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は14人,負傷者は25人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,913人,負傷者は110,750人と発表(19日)。
ガザ地区での停戦が予定の現地時間6時30分(日本時間15時30分)が過ぎても実行されず,イスラエルのネタニヤフ首相はハマスから解放される人質の名簿が提出されないため,攻撃を継続すると宣言,ガザ地区各地への空爆と砲撃によりパレスチナ人13人死亡,25人負傷,停戦仲介国は停戦発効前の48時間の「平穏」状態を要請していたが,直前までイスラエルの攻撃が継続したために名簿送付が困難だったとパレスチナ当局発表,約3時間後の9時15分に解放される人質3人の名簿が提出され停戦が発効(19日)。
・停戦の発効によりハマスが拘束していた人質のイスラエル人女性3人が解放され家族と再会,その後イスラエルが拘束中のパレスチナ人女性69人と少年21人が釈放
(19日)。
・ヨルダン川西岸地区でイスラエル兵の発砲によりパレスチナ人少年1人死亡,パレスチナ人の複数の集落をユダヤ人入植者が襲撃し民家や車両に放火,国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)発表(19日)。
・ネタニヤフ内閣に参加している政党「ユダヤの力」のベングヴィル国家保安相,エリヤフ・エルサレム問題相,ワッセルラウフ周辺開発相が辞表を提出(19日)。
イスラエル政府の全閣僚による閣議でガザ地区の停戦合意を賛成4閣僚,反対8閣僚で承認(18日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は23人,負傷者は83人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,899人,負傷者は110,725人と発表(18日)。
・ガザ地区南部ハンユニス西部マワシ地区の避難テントへのイスラエル軍の空爆によりパレスチナ人5人死亡(18日)。
・ヨルダン川西岸地区北西部トゥルカルムをイスラエル軍が襲撃しパレスチナ人の抗議行動と衝突,パレスチナ人数人負傷(18日)。
・イエメンのフーシ派がイスラエル国防省標的に弾道ミサイルを発射したと発表,イスラエル軍は軽微な物的損害のみと発表(18日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は88人,負傷者は189人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,876人,負傷者は110,642人と発表(17日)。
・ガザ地区へのイスラエル軍の激しい攻撃が継続,南部ハンユニスのナセル病院近くで空爆により2人死亡,7人負傷,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により9人死亡,ハンユニス東部の民家への空爆により5人死亡,中部ヌッセイラート難民キャンプで空爆により1人死亡(17日)。
・イスラエル政府の安保閣僚の閣議でガザ地区での停戦合意を承認,ネタニヤフ首相はハマスが停戦合意に違反すれば戦闘を再開すると言明,ベングヴィル国家保安相とスモトリッチ財務相は停戦合意が承認されれば内閣から離脱すると再度警告(17日)。
・イスラエル政府の全閣僚による閣議でガザ地区の停戦合意を承認(18日)。
・ガザ保健省(GMH)による過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死傷者数の発表なし(16日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも86人死亡,民間防衛隊発表,北部ガザ市北方シェイク・ラドワン地区で空爆により12人死亡,20人以上負傷,ガザ市中心部と西部で空爆により計7人死亡,10人以上負傷,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により2人死亡,4人負傷(16日)。
・イスラエルのネタニヤフ首相がガザ地区での停戦合意について,「ハマスが調停国やイスラエルと達した合意の一部に違反し,土壇場で譲歩を迫ろうとしている」と批判し,「ハマスが合意の全ての項目を受け入れたことを調停国がイスラエルに通知するまでイスラエルの閣議は招集されない」との声明を発表,スモトリッチ財務相はハマスが敗北するまで攻撃を全面的に再開する場合のみ自らの党は政権に留まると主張,ベングヴィル国家保安相も停戦合意が承認されれば政権から離脱すると主張(16日)。
・ハマス上級幹部がハマスはガザ地区での停戦合意に関与し続けていくと言明(16日)。
・イエメンのフーシ派がガザ地区でのハマスとイスラエルの停戦合意の履行状況を注視しイスラエル側に違反があれば紅海での商船への攻撃を再開すると警告(16日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は62人,負傷者は253人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,707人,負傷者は110,265人と発表(15日)。
カタール・ドーハでのガザ地区の停戦交渉でイスラエルとハマスが停戦と人質解放で合意,6週間の停戦とイスラエル軍の段階的撤退,ハマスが拘束中の人質33人の解放,イスラエルが拘束中のパレスチナ人の釈放など,19日に発効予定,発効後16日目までにその後の交渉を開始(15日)。
・停戦合意の発表後にガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも32人死亡,医療関係者発表(15日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニンでイスラエル軍の空爆によりパレスチナ人3人死亡,負傷者多数,パレスチナ赤新月社発表(15日)。
・イスラエル軍がヨルダン川西岸地区北部ジェニン南方カバティヤでIED攻撃により兵士3人負傷と発表(15日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は61人,負傷者は281人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,645人,負傷者は110,012人と発表(14日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも17人死亡,医療関係者発表,中部ディル・アルバラで空爆により少なくとも10人死亡,南部ラファで空爆により女性1人含む5人死亡,4人負傷(14日)。
・ハマス幹部がガザ地区の停戦交渉の仲介国から提示された停戦案について,イスラエルがガザ地区からの軍の撤退に関する工程表を提示していないため回答を保留していると発表(14日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニンでイスラエル軍の空爆によりパレスチナ人少なくとも6人死亡,5人負傷(14日)。
・イスラエル政府のベングヴィル国家治安相がネタニヤフ首相がガザ地区での停戦と人質解放協定に同意した場合,ハマスへの危険な降伏として閣僚を辞任すると警告(14日)。
・イエメンのフーシ派の報道官がガザ地区のパレスチナ人支援のためにイスラエル西部テルアビブの「死活的な標的」を超音速弾道ミサイル1基と無人機4機で攻撃したと発表(14日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は19人,負傷者は71人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,584人,負傷者は109,731人と発表(13日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも33人死亡,民間防衛隊当局発表,北部ガザ市の避難所の学校への空爆により家族5人死亡,同市ダラジ地区で空爆により子ども2人子ども3人含む7人死亡,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により2人死亡,5人負傷(13日)。
・イスラエル軍がガザ地区北部ベイト・ハヌーンでの戦闘で兵士5人死亡と発表(13日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去28時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は28人,負傷者は89人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,565人,負傷者は109,660人と発表(12日)。
・バイデン米大統領がイスラエルのネタニヤフ首相と電話会談し,ガザ地区の即時停戦や人質解放の必要性を強調しカタール・ドーハでの停戦交渉について協議(12日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去48時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は32人,負傷者は193人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は行方不明者の死者への追加を含めて46,537人,負傷者は109,571人と発表(11日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも16人死亡,民間緊急部隊発表,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により女性2人と子ども2人含む8人死亡,北部ガザ市ダラジ地区で計8人死亡(11日)。
・イスラエル軍がガザ地区北部の戦闘で兵士4人死亡と発表(11日)。
・ガザ保健省(GMH)による過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死傷者数の発表なし(10日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも15人死亡,医療関係者発表,中部ブレイジ難民キャンプで空爆により7人死亡,北部地域で空爆により3人死亡(10日)。
・レバノン南部タイル・デッバでイスラエル軍の無人機の空爆により5人死亡,4人負傷,レバノン保健省発表,イスラエル軍はヒズボラの武器輸送車両標的の攻撃と主張(10日)。
・イエメン西部サヌアやホデイダ港などをイスラエル軍が空爆,サヌアの発電所で作業員と民間人計3人負傷,イスラエル軍は発電所や港湾施設はフーシ派が軍事活動に利用と主張,フーシ派はイスラエル西部テルアビブに無人機3基を発射,紅海上の米海軍空母「ハリーSトルーマン」標的に無人機とミサイルを発射したと発表(10日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は70人,負傷者は104人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は46,006人,負傷者は109,378人と発表(9日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも76人死亡,保健当局発表,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により8人死亡,中部ディル・アルバラで空爆により子ども3人含む9人死亡(9日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は51人,負傷者は78人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,936人,負傷者は109,274人と発表(8日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも22人死亡,医療関係者発表,北部ガザ市シェイク・ラドワン地区の集合住宅への空爆により少なくとも10人死亡,同市南郊ゼイトゥン地域で5人死亡,中部ディル・アルバラで空爆により3人死亡,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により4人死亡,南部ハンユニスで無人機攻撃により子ども5人死亡(8日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ナブルス北東タムンで無人機の空爆により子ども2人含むパレスチナ人3人死亡(8日)。
・米中央軍(USCENTCOM)がイエメン西部サヌアや北部アムラン州などのフーシ派の拠点や地下の武器製造施設を空爆したと発表(8日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は31人,負傷者は57人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,885人,負傷者は109,196人と発表(7日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも38人死亡,医療当局発表,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により5人死亡,20人以上負傷,南部ハンユニスの避難テントへの空爆により子ども8人と女性5人死亡,同市で民間車両への空爆により5人死亡,北部ガザ市の民家への空爆により4人死亡(7日)。
・イスラエル軍がガザ地区北部ベイト・ハヌーンで戦闘により軍部隊司令官1人と副官1人死亡と発表(7日)。
・ヨルダン川西岸地区各地でイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人3人死亡,北部ナブルス北東タムンで空爆により少年1人死亡,同地域タルーザでイスラエル兵の発砲により1人死亡,同市で銃撃戦により1人死亡,イスラエル兵1人負傷(7日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は49人,負傷者は75人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,854人,負傷者は109,139人と発表(6日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも48人死亡,75人負傷,保健当局発表(6日)。
・ヨルダン川西岸地区北西部のユダヤ人入植地ケドゥミム近くでバスと車への銃撃により入植者3人死亡,7人負傷(6日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は88人,負傷者は208人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,805人,負傷者は109,064人と発表(5日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも人死亡,保健当局発表,中部ヌッセイラート難民キャンプで空爆により5人死亡,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により4人死亡,南部ハンユニスの警察署への空爆により5人死亡,中部ブレイジ難民キャンプで空爆により3人死亡,北部ガザ市シェイク・ラドワン地区の民家への空爆により7人死亡(5日)。
・ハマス軍事部門のアル・カッサム旅団がガザ地区北部ベイト・ラヒヤでのイスラム聖戦のアル・クッズ旅団とともにイスラエル軍部隊を攻撃しイスラエル兵1人を殺害したと発表(5日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニン南部の民家へのイスラエル軍の銃撃によりパレスチナ人1人死亡,同地区北部ナブルスのアスカリ難民キャンプでイスラエル兵の発砲によりパレスチナ人少年1人死亡,保健省発表(5日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は59人,負傷者は273人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,717人,負傷者は108,856人と発表(4日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも73人死亡,医療当局発表とパレスチナ・メディア報道,北部ガザ市の民家2軒への空爆により少なくとも17人死亡,大多数は女性と子ども,同市の別の民家への空爆により5人死亡,10人は瓦礫の下に埋没,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により少なくとも6人死亡(4日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ナブルスでイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも1人死亡,9人負傷,パレスチナ保健省発表(4日)。
国連レバノン暫定軍(UNIFIL)が4日朝にイスラエル軍のブルドーザーがレバノン南部のラブ―二村の両国間の撤退ラインの目印とUNIFILの陣地の隣のレバノン軍の監視塔を破壊したのは,昨年11月27日に発効したイスラエルとレバノンのヒズボラの停戦協定の基礎となる2006年の「国連安保理決議1701と国際法に明白に違反」していると非難(4日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去24時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は77人,負傷者は145人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,658人,負傷者は108,583人と発表(3日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも42人死亡,医療当局発表(3日)。
・ヨルダン川西岸地区北部ジェニンで武装集団の銃撃によりパレスチナ人男性1人と息子1人死亡(3日)。
・ハマス軍事部門のアル・カッサム旅団がガザ地区北部ジャバリア難民キャンプでイスラエル軍戦車5両を構成の爆薬で攻撃し破壊したと発表(3日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去48時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は28人,負傷者は59人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,581人,負傷者は108,438人と発表(2日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも74人死亡,医療当局発表,中部マガジ難民キャンプとヌッセイラート難民キャンプで空爆により少なくとも子ども5人と女性4人含む14人死亡,南部ハンユニスの内務省施設への空爆により6人死亡,他の死亡者は北部ジャバリア難民キャンプとガザ市へので空爆による(2日)。
・イスラエル軍がレバノン南部のヒズボラの中距離ロケット発射装置を攻撃し破壊したと発表(2日)。
・ガザ保健省(GMH)が過去48時間のガザ地区へのイスラエル軍の攻撃によるパレスチナ人の死者は12人,負傷者は41人,2023年10月7日以降のイスラエル軍の攻撃によるガザ地区のパレスチナ人の累計死者数は45,553人,負傷者は108,379人と発表(1日)。
・ガザ地区各地へのイスラエル軍の攻撃によりパレスチナ人少なくとも36人死亡,医療関係者発表,北部ジャバリア難民キャンプで空爆により少なくとも15人死亡,北部ガザ市郊外のシェジャイアで空爆により少なくとも8人死亡,中部ブレイジ難民キャンプで空爆により10人死亡,南部ハンユニスで空爆により3人死亡(1日)。
・ハマス軍事部門のアル・カッサム旅団がイスラエル南部に向けて多数のロケット弾を発射したと発表(1日)。
・イスラエル軍がレバノン南部のヒズボラの武器庫標的に空爆を実施したと発表(1日)。
イスラエルのガラント前国防相が国会議員を辞職すると発表,ガラント氏は2023年3月に最高裁の権限を縮小する政府案の撤回を主張しネタニヤフ首相によって解任,解任に抗議する大規模なデモによって首相は解任を撤回,その後ハマスに対する軍事作戦で民間人に多数の死傷者が発生していることを批判し,超正統派ユダヤ教徒の兵役免除の廃止を主張したことなどで首相と対立し2024年11月に解任(1日)。
[アフガニスタン情勢] 【アフガニスタン戦争における犠牲者数】
アフガニスタン戦争の経緯については『対テロ戦争の政治経済学』をお読みください。

・北東部バダクシャン州ファイザバードで6日に自動車爆弾攻撃により死亡したタリバンの州副知事の葬儀が行なわれていたモスク内での爆弾攻撃により16人死亡,50人以上負傷,ISが実行声明(2023.6.8)。
・パキスタン北西部ペシャワールの警官利用のモスク内で自爆攻撃により警官ら61人死亡,170人以上負傷(2023.1.30)。

・東部ナンガルハル州ジャララバードをタリバンが無抵抗で制圧,カブール郊外の複数の地域にタリバンが進軍し包囲,タリバン報道官が全部隊に対してカブール入り口で待機し市内に入らないように指示したと発表,
カブール国際空港に米軍1000人規模が到着し欧米の外交官や市民の郊外退避を警備,ガニ大統領ら政府と議会幹部がタジキスタンやパキスタンに退避し政権崩壊,タリバンがカブールを制圧し政治部門代表のバラダル師が勝利宣言報道官が90年代後半の統治よりも穏健な政策を採用し女性の権利を尊重し外国人とアフガン人を保護する方針を発表(2021.8.15)。

[パキスタン情勢]
北西部カイバー・パシュトゥンクワ州アフガニスタン国境近くのバジュール地区でイスラム主義強硬派政党「イスラム聖職者協会ファズル派」(JUI-F)の集会での自爆攻撃により少なくとも子ども5人含む63人死亡,約200人負傷,ISホラサン州が実行声明(2023.7.30)。

[論文・分析]

「対テロ戦争」は何をもたらしたのか(2017/3/25)
『薄氷の帝国 アメリカ ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』 ( 出版案内と序論 12/1/25公開)
イラク戦争前史 ― パレスチナ問題(09/1/31掲載)
「イラク情勢メモ」:イラク情勢の「改善」をどう見るか?(09/1/25掲載)
Collateral Damage ― “対テロ戦争 War on Terror”の非人間性(2009/1/20掲載)

はじめに

〔共同研究開始の経緯〕

2003年2月,アメリカによる対イラク攻撃が迫っている危機的状況のなか,社会科学研究者の有志36人が呼びかけ人となって,新聞に「意見広告 社会科学研究者は訴える」を掲載する運動をはじめました。
国際法や国際世論を無視した先制攻撃と日本の加担への反対を世論に訴えることが目的でした。その運動の一環としてウェブ・サイトを開設することになり,呼びかけ人の依頼により,わたしがサイトの作成・管理にあたることになりました。
そこで2月中旬に「研究者は訴える」と題したウェブ・サイトを開設し,賛同者名簿の作成,運動の進展・拡大にともなう更新,読者から送られてくるメールへの対応などを担当しました。
さらに3月17日,ブッシュ大統領の最後通告演説をうけて,呼びかけ人による「軍事行動即時停止要求の声明」をウェブ・サイト上で発表し,「声明」への賛同者のメールによる受付をはじめました。
しかし3月20日,世界的な反戦運動の盛り上がりをあざ笑うかのように米英軍のイラク攻撃が強行されました。
(この意見広告や声明,運動の経緯については「研究者は訴える」ウェブ・サイトをご覧ください。また,最後通告演説直後にウェブ上に公開した私見はこちらをご覧ください。)
わたしはこの「イラク戦争」の経過の記録をはじめるとともに,わたしの研究会(ゼミナール)の学生(新4年生)に,この戦争の記録と背景や実態の分析を2003年度の共同研究のテーマとしてはどうかともちかけてみました。わたしのゼミの専攻分野が政治経済学・現代資本主義論であり,第2次大戦後の資本主義を世界史的視野から理論的・実証的に分析することが基本テーマであったからです。彼らも現在進行中の深刻な問題をリアルタイムで取り扱うことに非常に興味を持ってくれ,4月から参加した新3年生の同意も得て,「イラク戦争を考える」共同研究が出発しました。

〔分析視角〕

共同研究を始めるためには分析視角を共有することがまず大切です。
わたしたちは,「イラク戦争」を単に時論的にではなく,
1. 多面的・歴史的視点から考察すること,
2. 自分たち自身の問題として考えるため,また戦後日本経済をゼミのテーマの1つとしていることから,国際社会と日本との関係・日本の「戦争」への対応を考察の柱の1つとすること,
3. 安易に独りよがりの結論を下すのではなく,考えるための材料を可能な限り集めて取捨選択して提示すること,
を基本方針としました。
(1) より具体的には,この「戦争」を9.11同時多発テロに起因する問題としてではなく,あるいは少しさかのぼって1991年の湾岸戦争前後に根源がある問題としてでもなく,第2次大戦後の国際関係や中東地域の複雑な政治・軍事関係を考慮しなければ本質が理解できない問題として分析するということです。
もちろん,中東問題の焦点であるパレスチナ問題の起源は紀元前にあります。そこまでさかのぼらなくとも,現代につながるパレスチナ問題の複雑化*の出発点は,第1次大戦中,イギリスがパレスチナの地にアラブ人とユダヤ人双方に独立国家建設を認める矛盾した政策(フサイン・マクマホン協定とバルフォア宣言)をとったこと,いわゆるイギリスの「二枚舌外交」にあります。
*現代のパレスチナ問題の起源と経過については,「イラク戦争前史―パレスチナ問題」をご覧ください。
(2) ただ,イスラエルとアラブ諸国との対立にしてもイスラム圏諸国間関係にしても,今回の「イラク戦争」につながるような問題の複雑化を規定する要因の大部分は,第2次大戦後の特殊な国際関係にあるとわたしたちは考えました。
第2次大戦後の特殊な国際関係においてもっとも重視すべき要素は,戦後まもなくはじまった米ソ冷戦です。アメリカを中心とする西側資本主義陣営とソ連を中心とする東側社会主義陣営との対立はグローバルな広がりを持ち,政治・軍事・経済・社会などさまざまな分野で戦後世界を規定する重要な要因となりました。
40年以上続いた冷戦期間中,米ソがそれぞれ自陣営の支配圏の維持・拡大と強化のために,世界各国の政権や諸勢力に政治・軍事・経済的に影響力を行使しました。
国際的な紛争を平和的に解決する目的で設立された国際連合も,米ソ間の利害の対立する問題については機能不全に陥りました。
日本は敗戦から6年以上もアメリカ主導の占領下に置かれ,諸制度の急激な改革が行なわれました。日本の独立と同時に結ばれた日米安保条約(日米軍事同盟),その後も続く政治的な対米依存(従属),日本経済の復興や急激な経済成長も,冷戦体制のもとでのアメリカとの関係によって根本的に規定されています(これはわたしのゼミで扱う基本テーマの1つです)。
中東地域も米ソ対立・覇権争いの変遷に翻弄された地域です。
(3) 冷戦は,時に朝鮮戦争やベトナム戦争のような地域的な(代理)戦争として,熱い戦争として現実化しましたが,米ソが直接戦うことはありませんでした。しかし,米ソの熾烈な軍拡競争とそれぞれの支配圏の維持・拡大のための軍事的・経済的な介入は,両国にとって実際の戦争を戦うのと同様の重い負担となりました
象徴的なのがアメリカのベトナム戦争への介入とソ連のアフガニスタン侵攻です。
アメリカは1965年からベトナム戦争に本格的に介入をはじめました。介入当初の予想に反して,南ベトナム解放民族戦線と北ベトナムの抵抗によって戦闘は長期化・泥沼化していきます。アメリカは,ピーク時で年間288億ドル(総額1,067億ドル)の巨額の直接戦費と54万人の兵力を投じ,核兵器以外のあらゆる近代兵器を使用しました。死者だけでも,アメリカ兵約4万6000人,南ベトナム軍や韓国軍などの援助軍約19万人,北ベトナム・解放戦線軍92万人,民間人120万人といわれています。負傷者や後遺症に苦しむ人はさらに膨大でしょう。
これだけの犠牲を払いながら勝利できず,アメリカ国内や世界的な反戦運動の高まり,後述の経済的負担の重さなどから,1973年のパリ協定でアメリカ軍の完全撤退となりました。
アメリカは軍事的に敗北しただけでなく,経済的にも深刻な影響を受けました。ベトナム戦争はアメリカの財政赤字を膨大なものとし,インフレーションに拍車をかけ,産業の国際競争力を低下させ,国際収支の赤字を悪化させました。その結果,基軸通貨であるドルに対する信認が低下してドル危機が深刻化し,アメリカは1971年に金とドルの交換を停止せざるを得なくなります。国際経済は混乱し,固定相場制が維持できなくなって変動相場制に移行します。第2次大戦後の資本主義諸国の経済復興と成長の枠組みであったIMF体制が崩壊し,世界経済は1970年代の長期停滞に入っていきました。
ソ連は1979年末にアフガニスタンの内戦に軍事介入しました。反政府派はパキスタンの支援をえながらゲリラ活動で対抗し,アメリカも武器の供与など反政府派を援助して,戦闘は長期化・泥沼化していきました*。ソ連は10万を超える兵力を投入しながら勝利できず,多数の人的損害(15,000人の戦死者・37,000人の負傷者といわれる)をこうむり,経済的にも大きな負担となったため,1989年2月,ゴルバチョフ政権のもとで撤兵が行なわれました。
*サウジアラビアの富裕な家に生まれたオサマ・ビン・ラーデンがソ連と戦うためにアフガニスタンに入り,アラブ義勇兵の募集や訓練に資金提供などで重要な役割を果たしました。そのために作られた基金がアル・カーイダ(al Qaida)です。
この時期にはオサマは親米でしたが,ソ連のアフガニスタンからの撤退後の90年代に反米に転じて,アル・カーイダは反米武装組織に変わっていきます。
(4) 米ソ両国とも冷戦とそれに付随する地域戦争の負担に耐えられず,1989年のマルタ会談によってようやく冷戦の終了が公式に宣言されたのです。アメリカはレーガン軍拡の影響も加わって80年代後半に純債務国となったことに象徴されるように経済的に衰退し,ソ連は経済的困難ばかりか政治的混乱も極限に達し,国自体が消滅してしまいました。
第2次大戦後の戦争(冷戦・熱戦)は,戦場となった国・地域を荒廃させたのはもちろん,正義のない戦争を強行した米ソ両国をも多様な意味で荒廃させてしまったのです
*。
*戦後資本主義体制において冷戦のもつ意味については,わたしの「冷戦とアメリカ経済」『薄氷の帝国 アメリカ ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』をお読みください。
さらに,冷戦中に米ソが影響下に置いた各国や地域・諸勢力に対して行なった政策は,それら国民や民族の自立・民主化のためにではなく,自陣営の安全保障と支配圏の維持・拡大と強化を第1の目的としていました。両国とも民主的国家や勢力だけでなく,独裁政権や軍事政権であっても自国にとって有用であれば軍事・経済援助やその他の支援を行ない,支配下に置いたのはその現われです。
冷戦終結後はアメリカもソ連(ロシア)もその影響下に置いていた国や地域の多くに対して,そうした支援と支配を続ける必要もその余裕もなくなりました。いわば,冷戦体制の維持というタガが外れたのです。
冷戦中に米ソ両国の援助と支援を受けた体制の下で抑圧され続けてきた人々や民族は,その体制に対する強い抵抗意識だけでなく,強い反米意識・反ソ(反ロ)意識を持ったのは当然でしょう。米ソの影響力が低下し,既存の支配体制が弱体化すれば,そうした意識を行動として現実化させようとする動きが出てくることも当然でしょう。
1990年代以降,世界の各地で民族紛争や地域紛争がいっきに噴出しはじめたこと,アメリカやロシアなどに対するテロ(実行者にとっては抵抗運動)が頻発するようになったことは,こうした背景のためだと考えられます。
(5) 他方,冷戦終結は国際紛争の調停機関としての国連の存在意義と機能を高めるはずです。アメリカもロシアも一国だけで国際紛争を封じ込める能力も必要性もなくなったからです。また,国連のシステムにはさまざまな弱点があるとしても,現実的に国際紛争を調停し解決する多国間の協議・協力機関は国連しかないからです。
(6) 以上のような認識にたって,わたしたちは「イラク戦争」を分析していこうと考えました。
そこで,以下のような論点と課題を設定しました。
1. 冷戦中および冷戦後のアメリカの中東政策
2. アメリカの政策の中東地域への影響
3. アメリカのイラク攻撃の経緯:単独行動主義への傾斜
4. 冷戦中および冷戦後の国連の役割
5. 冷戦中および冷戦後の日米関係
6. イラク戦争の原因についての諸説の検討
さらに,
7. イラク戦争の推移を記録し,分析視角(4)の認識からこの戦争が容易には「終わらない」性格を持っていることを明らかにすること
8. アメリカにとってのベトナム戦争,ソ連にとってのアフガニスタン侵攻のように,イラク戦争は現代世界にどのような影響を与え,世界史の中でどのような意味を持つことになるのかを考察していこうと考えました。
2003年度は,これらの一部(1〜6)について延近が論文構成を提案し適宜コメントしながら,延近研究会12期・13期の学生が論文にまとめ,三田祭と延近研究会OB/OG会でとして発表しました。しかし,問題の難しさと幅の広さから論文としてはかなり未消化なものでした。
2004年度は,13期と14期の学生がそれらの改良と7,8の作業を行ない,延近提案の論文構成とコメントにより「イラク戦争のアメリカ政治・経済への影響」を中心として論文にまとめ,三田祭と延近研究会OB/OG会で発表しました。
当初は論文本体と要約をこのウェブサイト上に公開する予定でしたが,インターネット利用者の著作権軽視の状況*にかんがみ,公開の形式等を検討中です。
*このウェブサイト上に公開しているわたしの著作が他大学の学生によってコピーされてレポートとして提出されているばかりか,某大学の教員(非常勤)が,出典を明示せずに無断で教材として配布していたとの情報を当該大学の学生から連絡を受けたことがあります。
「イラク戦争を考える」を読みたいという希望も多く,公開を検討してきましたが,公開するためには論文としての完成度を上げ,現時点までのイラク情勢や「対テロ戦争」の推移についても盛り込んだものを公開したいと考えています。現在,一般公開に向けて私が全面的に改訂作業中です。その一部は論文ドラフトとして順次掲載していく予定です。(2009年1月31日記)
「イラク戦争を考える 第1部」については,2003年度の論文作成時点の原稿の修正は最低限にとどめたものをPDFファイルで公開しました。ファイルのダウンロードおよび印刷はできますが,著作権保護のために,文章や図表などのコピーはできないようなセキュリティ設定としてあります。また背景にわたしのニックネームが透かしとして入っています。
イラク戦争を含む「対テロ戦争」と「新帝国主義」戦略についてのわたしの見解は,別に「薄氷の帝国 アメリカ」と題する論文として公開しています(2009年12月30日記)。
「薄氷の帝国 アメリカ」は,大幅に加筆修正して,2008年秋以降の世界的金融・経済危機の構造を論じた著書『薄氷の帝国 アメリカ― 戦後資本主義世界体制とその危機の構造』として,御茶の水書房から2012年2月に出版いたします。本書の構成と序論はこちらでご覧ください(2012年1月25日追記)。
「イラク戦争を考える 第1部」(pdf. 3.6MB)
「薄氷の帝国 アメリカ」

(延近 充)

各年度の論文構成は次のページをご覧ください。
「イラク戦争を考える」第1部(2003年度)
「イラク戦争を考える」第2部(2004年度)
7.のための資料として作成中の年表は次のページをご覧ください。
イラク戦争(対テロ戦争)関連年表 2003年2月〜
原則として複数のソースで確認できた事実のみを分類・収集して作成。
日付は時系列参照の便宜のため日本時間で表示し,必要に応じて現地時間を併記した。
現在,ほぼ毎日更新中です。
8.の考察のために作成している,イラク情勢の現状に関する私のメモはこちらのページをご覧ください
イラク戦争における
犠牲者
アフガニスタン戦争
における犠牲者
原油価格の推移
2003年〜
日米株価の推移
2008年9月〜
延近研究会 共同研究メンバー
第12期 植村昌史,大倉由貴子,乙武郁子,菊地雅子,岸田昌子,高石裕介,田川亮輔,永田大介,
村上創太,山口顕
第13期 安部雅隆,石井宏太郎,和泉ちひろ,小島健一郎,杉井良子,関谷直人,関屋文彦,
長江崇将,福市年成,堀田佳秀,山口功,山本真澄,吉田一陽
第14期 井上允之,内川浩樹,内田健介,栢島由佳里,今野聡,田中広美,中尾俊明,西山浩平,
福原早苗,松崎禎夫,望月さやか,山崎理絵,渡辺陽介
Iraq Body Count(民間人死亡者)

【関連情報・リンク】

対イラク戦争と日本の加担に対する研究者有志の反対声明(2003.3.20)
Column アメリカの対イラク最後通告と日本の対応について(2003.3.18)
研究者有志による意見広告「アメリカの対イラク先制攻撃と日本の加担に反対します」(2003.2.27)
ドキュメンタリー映画「アメリカばんざい - crazy as usual -」
イラクで死んだ兵士の家族,イラク派遣を拒否した兵士,ベトナム・アフガニスタン・イラクからの帰還兵,現役海兵隊員へのインタビューや海兵隊員養成のブート・キャンプの取材などで構成されたドキュメンタリー映画。2008年7月26日から公開。私も協賛しています。
「リダクテッド 真実の価値」
2006年にイラク・サーマッラで起きた米兵によるイラク人少女レイプ殺人事件を題材としたブライアン・デ・パルマ監督の作品。フィクションとインターネット上で公開されている実際の映像をミックスして,Redacted−情報の事前削除・編集:アメリカの情報操作・報道規制や偏向報道を描いている。10月25日から公開。この映画のサイトではイラク研究者の酒井啓子氏を講師とするシンポジウムなどの情報あり。
解放軍として歓迎される期待が裏切られ,泥沼化するイラク戦争下,「テロ」を恐れて心理的に追い詰められる米兵たち。イラクで何が起こっているのか,イラクに派兵したアメリカ社会では何が起こっているのかを考えさせる映画。
イラクと同様に泥沼化するアフガニスタンへ日米同盟のために自衛隊派遣を模索し続ける日本政府。
これは「ひとごと」の話ではない。無知は免罪符とはならないのである。

「対テロ戦争」の最前線の実態を知るための手がかりとなるこの2つの映画についての私のコメントをアップしてあります。

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(1)簡単な自己紹介
(2)経済学やこの分野の学習経験
(3)質問をしようと思った理由
などを付記してください。
Web上のコミュニケーションのマナーとしてだけでなく,回答やコメントの内容・レベルはこれらの情報によって変わってきますので。無用の誤解を避けるために念のため。
匿名のもの,学校等で課されたレポートなどに直接かかわるような質問,営利目的の質問などには答えられません。
*検索サイトなどから直接このページに来られた方へ
このページは延近研究会共同研究「イラク戦争を考える」の一部です。
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