公共経済学 2000年度秋学期試験問題 正解

担当:土居丈朗

 本試験の正解は、本講義の内容に準拠している。下記以外にも正解と見なし得るものはあり、採点者がその正否を判断する。

1.
  1. 他のいずれかの経済主体の効用(あるいは利潤)を減らすことなく、どの経済主体の効用(あるいは利潤)を増やすことがもはやできない状態。
  2. ある人が対価を支払えば、他の人は財やサービスの消費から排除される性質。
  3. ある人が財やサービスを消費したら、その同じ財やサービスについて他の人々の消費を減らす性質。
  4. 非排除性と非競合性を持つ財。
  5. サミュエルソンの公式(私的財と地方公共財に関して、各家計の限界代替率の和が限界変形率と等しくなる)と最適人口分布の条件(各地域の労働の社会的純限界生産力(私的財の追加的な生産量の変化と消費量の変化の差)が等しくなる)を同時に満たすこと。

2.
@公共財の最適供給問題について、家計Bがすでに効用を最大化して効用水準がUB*に達していて、この水準UB*を維持しつつ、家計Aの効用を最大化すればよい。そこで、家計Aの効用最大化問題を考える。
   max UA(xA, G)=5xAG
    subject to 3xBG=UB*,
           x−8G=0,
           xA+xB+x=960
について、ラグランジュ乗数法で解く(ラグランジュ関数をLとする)
   L=5xAG+l1{3xBG−UB*}+l2{xA+xB+x−960}+l3{x−8G}
この1階条件より、
    xA+xB=8G
となり、サミュエルソンの公式が得られる。この式とxA+xB+8G=960より、
   8G+8G=960
 よって、この下での公共財供給量は
   G=60
となる。
A公共財の自発的供給問題(ナッシュ均衡)については以下のように解く。家計Aの公共財供給量をTA、家計Bの公共財供給量をTBとする。このとき、TA+TB=Gの関係が成り立っている。そこでまず家計Aの効用最大化問題(TBを所与として)、
   max UA(xA, G)=5xAG
    subject to xA+8TA=360,
           TA+TB*=G
について、ラグランジュ関数をL=5xA(TA+TB*)+l1(360−xA−8TA)とする。
 次に、家計Bの効用最大化問題(TAを所与として)、
   max UB(xB, G)=3xBG
    subject to xB+8TB=600
           TA*+TB=G
について、ラグランジュ関数をL=3xB(TA*+TB)+l2(600−xB−8TB)とする。
 これらを解くと、それらの1階条件から
    xA      xB
   ────=────=8
    TA+TB   TA+TB
となる。上式と予算制約式より
   xA=360−8TA,
   xB=600−8TB
となる。したがって、ナッシュ反応関数は
   TA=45/2−TB/2,
   TB=75/2−TA/2
となる。このとき、ナッシュ均衡点では、TA=5, TB=35となる。よって、この下での公共財供給量は
   G=40
となる。
B公共財の自発的供給問題(ナッシュ均衡)については以下のように解く。家計Aの公共財供給量をTA、家計Bの公共財供給量をTBとする。このとき、TA+TB=Gの関係が成り立っている。政府による所得再分配政策により、家計A、家計Bともに所得は480となった。そこで家計Aの効用最大化問題(TBを所与として)、
   max UA(xA, G)=5xAG
    subject to xA+8TA=480
           TA+TB*=G
について、ラグランジュ関数をL=5xA(TA+TB*)+l1(480−xA−8TA)とする。
 次に、家計Bの効用最大化問題(TAを所与として)、
   max UB(xB, G)=3xBG
    subject to xB+8TB=480
           TA*+TB=G
について、ラグランジュ関数をL=3xB(TA*+TB)+l2(480−xB−8TB)とする。
 これらを解くと、それらの1階条件から
    xA      xB
   ────=────=8
    TA+TB   TA+TB
となる。したがって、ナッシュ反応関数は
   TA=30−TB/2,
   TB=30−TA/2
となる。このとき、ナッシュ均衡点では、TA=TB=20となる。よって、この下での公共財供給量は
   G=40
となる。
CT:同じである、U:ナッシュ、V:ない
D政府による公共財供給問題(リンダール均衡)については以下のように解く。hAとhBの関係はhA+hB=1である。そこでまず家計Aの効用最大化問題(hAを所与として)、
   max UA(xA, G)=5xAG
    subject to xA+8hAG=360
について、ラグランジュ関数をL=5xAG+l1(360−xA−8hAG)とする。
 次に、家計Bの効用最大化問題(hBを所与として)、
   max UB(xB, G)=3xBG
    subject to xB+8hBG=600
について、ラグランジュ関数をL=3xBG+l2(600−xB−8hBG)とする。
 これらの1階条件から、
   xA        xB
   ──=8hA,  ──=8hB
    G        G
となる。上式と予算制約式から、
   2hAG=45, 2hBG=75
が得られる。このとき、2(hA+hB)G=120であり、hA+hB=1だから、この下での公共財供給量はG=60となる。
 よって、
   hA=3/8(=45/120),
   hB=5/8(=75/120)
となる。

3.

@×、A○、B×、C○、D×

理由は略

試験問題


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