経済学のための数学公式集
ある日、私は大学の研究室で理論モデルの計算をしていました。そのとき、計算に必要な初歩的な数学の公式をうっかり忘れてしまい、その公式が載っている本を研究室の本棚で探しましたが、自宅に置き忘れてきことに気づきました。あまりにも初歩的な公式なので、図書館に行ったりして時間をかけて探すのは馬鹿らしい。かといって、このままではこの続きの計算ができないので弱ってしまいました。
そのとき、大学の研究室のパソコンはインターネットに常時接続しているので、どこかに公式が載っているウェブサイトがあるだろう、と期待を膨らませて検索しました。しかし、載っているウェブサイトがありませんでした。私は実に残念な思いをしました。私のウェブサイトに経済学で使う数学の公式を載せておけば、今後はそんな不便な思いをする必要がない。そんな経緯から、このページを作ろうと思い立ったのでした(「必要は発明の母」とは、言い得て妙ですね)。皆様にもお役に立てれば幸いです。
※ 使用上の注意 ※
このページは、あくまでも私が研究に必要な数学の公式を、備忘のために列挙しているものです。ここに載っていない公式は経済学にとって重要でないとは、一切意味しません。公式を表示するときに、ノーテーションや書くべき仮定を省略していることがあります(あくまでも私の備忘のためなので、私が思い出すに足る情報しか書いていません)。また、ここに載っている公式の中には、こんな重要なものを忘れてしまうとはなんと記憶力が悪いことか、という極めて初歩的なものも含まれています(最近私は、どうでもいいことを鮮明に覚えていたり、重要なことをすっかり忘れていたり、記憶力に偏りがあるもので…)。さらに、教育上の配慮から言えば、このページに公式だけしか書かれていないからといって、公式を暗記しさえすれば万全だと言いたいわけではありません。公式はその導出過程を理解することが重要です。これらの点をお含み置き下さい。
- 等比級数の和: the sum of geometric series
\[ a\sum_{i=0}^{n-1}r^i=a\frac{1-r^n}{1-r} \]
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\[ a\sum_{i=0}^\infty r^i=\frac{a}{1-r} \]
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\[ a\sum_{i=1}^\infty r^i=\frac{ar}{1-r} \]
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- 等差級数の和: the sum of arithmetric series
\[ \sum_{i=0}^{n-1}(a+id)=an+\frac{n(n-1)d}{2} \]
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- 変分法: calculus of variations
\[\max_{x(t)} \int_{0}^{T}{F(t,x(t),\dot{x}(t))dt} \]
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- オイラー方程式: Euler equation [必要条件: the necessary condition for optimization]
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\[\frac{\partial F}{\partial x}-\frac{d}{dt}\left(\frac{\partial F}{\partial \dot{x}}\right)=0 \]
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- ハミルトン関数: Hamiltonian (function)
\[\max_{\mathbf{x}(t)} \int_{0}^{T}{F(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t))dt} \]
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s.t.
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\(\dot{y}_i(t)=g_i(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t)) \)
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\[\mathbf{x}(t)=(x_1(t),x_2(t),\ldots,x_m(t)), \mathbf{y}(t)=(y_1(t),y_2(t),\ldots,y_n(t)) \]
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- ハミルトン関数: Hamiltonian (function)
\[\mathcal{H}=F(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t))+\sum_{i=1}^{n}\lambda_ig_i(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t)) \]
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- 1階条件: first order conditions
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\[\frac{\partial \mathcal{H}}{\partial x_i}=0 \]
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\[\dot{\lambda}_i(t)=-\frac{\partial \mathcal{H}}{\partial y_i} \]
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- 現在価値ハミルトン関数: present value Hamiltonian (function)
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\[\max_{\mathbf{x}(t)} \int_{0}^{T}{f(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t))e^{-\rho t}dt} \]
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s.t.
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\(\dot{y}_i(t)=g_i(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t)) \)
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\[\mathbf{x}(t)=(x_1(t),x_2(t),\ldots,x_m(t)), \mathbf{y}(t)=(y_1(t),y_2(t),\ldots,y_n(t)) \]
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- 現在価値ハミルトン関数: present value Hamiltonian (function)
\[\mathcal{H}=f(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t))+\sum_{i=1}^{n}\mu_ig_i(t,\mathbf{x}(t),\mathbf{y}(t)) \]
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- 1階条件: first order conditions
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\[\frac{\partial \mathcal{H}}{\partial x_i}=0 \]
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\[\dot{\mu}_i(t)-\rho\mu_i(t)=-\frac{\partial \mathcal{H}}{\partial y_i} \]
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- 中間値の定理: mean theorem
- 関数\(f(x) \)が閉区間\( \left[ a,b \right] \)において連続で開区間\( \left(a,b \right) \)において微分可能であるとする。このとき、
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\[ \frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c) \]
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\[a< c< b \]
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- を満たす\( c \) が存在する。
関数\( f(x) \)が閉区間\( \left[ a,b \right] \)において連続(だから積分可能)であるとする。このとき、
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\[ f(c)=\frac{1}{b-a}\int_{a}^{b}f(x)dx \]
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\[a< c< b \]
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- を満たす\( c \) が存在する。
- 1階1次微分方程式: first order linear differential equation
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\[\dot{x}+a(t)x+b(t)=0 \]
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\[\mbox{解: }x=e^{-\int a(t)dt} \{ C-\int b(t)e^{\int a(t)dt}dt \} \]
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- 導関数:
-
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\[f(x) \] |
\[ f'(x) \] |
\[ \frac{f(x)}{g(x)} (g'(x)\neq 0) \]
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\[\frac{f'(x)g(x)-f(x)g'(x)}{\{g(x) \}^2} \]
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\[ a^x (a \neq 1,a>0) \]
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\[ a^x \log a \]
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\[ e^x \]
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\[ e^x \]
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\[ e^{-x} \]
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\[ -e^{-x} \]
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\[f(x) \] |
\[ f^{(n)}(x) \] |
\[ x^a \]
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\[ a(a-1)\ldots(a-n+1)x^{a-n} \]
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\[ a^x (a \neq 1,a>0) \]
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\[ a^x (\log a)^n \]
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\[ \log|x| (x \neq 0) \]
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\[ (-1)^{n-1} \frac{(n-1)!}{x^n} \]
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- 合成関数の微分:
- 関数\(z=f(x,y) \)の1次の偏導関数が連続で、\(x=g(w) \)と\(y=h(w) \)が微分可能とする。このとき、\(z=f(g(w),h(w)) \)について、
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\[\frac{dz}{dw}=f_x\frac{dx}{dw}+f_y\frac{dy}{dw} \]
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- 陰関数微分:
- 陰関数\(f(x,y) \)= 0が全微分可能ならば、
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\[\frac{dy}{dx}=-\frac{f_x}{f_y} \]
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- オイラーの公式: Euler's formula
- \(k \)次同次関数\(f(x,y) \)に対して
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\[kf(x,y)=xf_x(x,y)+yf_y(x,y) \]
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- 2次方程式: second order equation
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\[\mbox{解: }x=\frac{-b \pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a} \]
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学生時代は忘れたことがない程なじみの公式でしたが、最近はたまにしか使わなくないので、部分的に一瞬忘れてしまうことがあるんですよね、意外と。
※ ここに載っていない公式を一目で見たい方は ※
私は、ピ−ター・バーグ=クヌート・シュドセーテル著(鈴村興太郎・丹野忠晋訳)『エコノミスト数学マニュアル』
日本評論社を使っています。でも、この本をいちいち持って出かけるのは面倒ですから、こうしてウェブサイトに載せようと思い立ったわけです。もちろん、公式はその導出が重要です。どのようにして導出されたかは、上記の本には書かれていませんから、各自で導出が書かれている本を参照して下さい。
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