日本の経済・日本経済の現状と問題 1999年度秋学期試験問題
担当：土居丈朗
※ 配付プリント、自筆ノートのみ持込可
１．戦後の日本経済のあゆみに関する次の文章を読み、各問に答えよ。
1945年の終戦直後の日本経済は、生産の復興が急務であった。1947年に政府は(Ａ)傾斜生産方式を採用し、［ Ⅰ ］金庫を設立して産業への資金を供給した。しかし、［ Ⅰ ］金庫は債券を(Ｂ)日銀引受けの形で発行したため、当時のインフレを助長した。結局このインフレは、［ Ⅱ ］・ラインによって収束した。
［ Ⅲ ］年の朝鮮戦争に伴う特需景気以降、日本経済は成長軌道に乗り、高度経済成長の時期を迎えた。この時期は、(Ｃ)固定為替相場制の下で、好況期に企業設備などの輸入が増加すると［ Ⅳ ］不足に陥り、為替レートの維持のために金融引締政策を行った。これに伴い景気が後退し、経常収支赤字が減少して［ Ⅳ ］不足が回避されると、金融緩和政策に転換して景気が回復した。このように、(Ｄ)金融引締と金融緩和を繰り返す政策を中心に景気調整を行った。1963年頃の経常収支赤字に端を発したこの政策により、証券不況の影響などが重なって「昭和40年不況」と呼ばれる大きな景気後退が起きた。その際、国の一般会計で高度成長期では初めて［ Ⅴ ］を発行して積極的な財政政策を行った。
その後日本経済は、［ Ⅵ ］年の第１次石油ショックを経て、安定成長期に入った。しかし、石油ショック後は税収が低迷する中で積極的な財政政策を行ったため、［ Ⅴ ］が累増した。これは財政を硬直化させることから、1980年代には(Ｅ)増税なき財政再建が財政運営の基本方針となった。そして、1980年代後半の好況期の税収増加も加わって、［ Ⅶ ］年度の当初予算で赤字［ Ⅴ ］の発行をゼロにする目標を達成した。1990年代前半の景気後退以降、税収が低迷する中で積極的な財政政策を行って、再び［ Ⅴ ］が累増して(Ｆ)今日に至っている。
①上の文章中にある空欄Ⅰ～Ⅶに、当てはまる語句をそれぞれ答えよ。
②下線部(Ａ)について、その内容を答案用紙２行以内で説明せよ。
③下線部(Ｂ)について、これがインフレを助長した理由を答案用紙３行以内で説明せよ。
④下線部(Ｃ)に関して、1949年に設定された円ドルレートは、１ドルいくらであったか答えよ。
⑤下線部(Ｄ)について、この時期のこのような政策を何と呼ぶか答えよ。
⑥下線部(Ｅ)に関して、どのようにして財政赤字を削減したかについて答案用紙１行以内で説明せよ。
⑦下線部(Ｆ)に関して、1998年度の名目国内総生産の額はおよそいくらか。百兆円単位（十兆円以下四捨五入）で答えよ。
２．企業財務に関する次の①～⑩の文章について、正しいものに○、誤っているものに×、どちらとも言えないものに△を付けなさい。
①売上高が増えれば、経常利益は増加する。
②総資本経常利益率は、高いほど望ましい。
③売上債権回転期間は、長い（大きい）ほど望ましい。
④流動比率が100%を下回ると、その企業の短期的な支払い能力が懸念される。
⑤経営状況が悪化している企業では、売上高人件費比率は上昇する。
⑥自己資本比率は、中小企業（の平均）よりも大企業（の平均）の方が低い。
⑦投資採算は、どの企業規模でも1990年代は一貫して低下し続けている。
⑧売上高経常利益率は、不動産業（の平均）で1990年代前半に一時マイナスとなった。
⑨売上債権回収期間は、1995～1997年度にかけて、中小企業（の平均）で急激に長くなった。
⑩固定比率は、中小企業（の平均）よりも大企業（の平均）の方が低い。
３．次の文章は1998年度におけるわが国の経済状況を説明したものである。文中にある空欄ａ～ｆに当てはまる記号ア～オを下の枠内から選べ。
- 実質GDP成長率は、前年度に引き続き2年連続でマイナスとなり、［ ａ ］。
- 民間最終消費支出の実質増加率は、前年度に［ ｂ ］が、1998年度は低い状態にとどまった。
- 民間企業設備投資の実質増加率は、前年度はプラスで、1998年度は［ ｃ ］。
- 政府支出（政府最終消費支出＋公的固定資本形成）の実質増加率は、上昇したものの、その財源の多くを公債でまかない、国債依存度は［ ｄ ］。
- 輸出と輸入（国民経済計算ベース）は、ともに減少し、その差額である経常収支は［ ｅ ］。
- 完全失業率は、上記の経済状況を反映して、［ ｆ ］。
ア．減少した イ．増加した ウ．1956年度以降最低となった エ．1956年度以降最高となった オ．前年度とほぼ同じ水準であった
４．次の図は、在庫循環あるいは資本ストック循環で用いられる概念図を表したものである。この図に関して、各問に答えよ。
①上の図で、縦軸に製造業における出荷の（対前年同期比）伸び率、横軸に製造業における在庫の（対前年同期比）伸び率をとったとき、下の表中にある空欄ａ～ｈに当てはまる記号をそれぞれ答えよ。ただし、空欄ａ～ｄには上の図中にある記号Ａ～Ｄから、空欄ｅ～ｈには下の記号あ～えから選択せよ。
あ．意図せざる在庫の積み上がり局面
い．意図せざる在庫減少局面
う．意図した在庫の積み増し局面
え．在庫調整局面
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景気の局面 |
図中の位置 |
在庫の増減 |
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景気回復期 |
[ ａ ] |
[ ｅ ] |
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景気拡張期 |
[ ｂ ] |
[ ｆ ] |
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景気後退初期 |
[ ｃ ] |
[ ｇ ] |
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景気後退本格化 |
[ ｄ ] |
[ ｈ ] |
②上の図で、縦軸に製造業における出荷の（対前年同期比）伸び率、横軸に製造業における在庫の（対前年同期比）伸び率をとったとき、1999年第Ⅱ四半期の時点でわが国の製造業全体では、記号Ａ～Ｄのうちどこに位置しているか、記号で答えよ（ただし、現時点で公表されているデータに基づくものとする）。
③上の図で、縦軸に製造業における設備投資の（対前年同期比）実質伸び率、横軸に製造業における資本ストックの（対前年同期比）実質伸び率をとったとき、1999年第Ⅱ四半期の時点でわが国の製造業全体では、記号Ａ～Ｄのうちどこに位置しているか、記号で答えよ（ただし、現時点で公表されているデータに基づくものとする）。
５．わが国の1980年代以降の、いわゆるバブルの形成と崩壊、そして最近の景気後退に至るまでの経済状況に関して、各問に答えよ。
①1986年第Ⅲ四半期からの景気拡張は、それ以前に行われた金融緩和政策（公定歩合の引下げなど）が一つの端緒となっている。この金融緩和政策をとるに至った、当時（1980年代前半）のわが国がおかれた国際貿易や為替レートの状況について、答案用紙５行以内で説明せよ。
②1986年第Ⅲ四半期からの景気拡張期に、株価や地価などの資産価格が大きく高騰した。そのプロセスについて、わが国のマクロ経済や金融市場の状況を中心に答案用紙５行以内で説明せよ。
③株価（日経平均株価）と地価（全国市街地価格指数：全用途平均）は、それぞれ1980年代以降いつ（何年に）ピークに達したか。また、この時期の株価や地価の上昇率は戦後を通じて最も高い状態であったか。これらをまとめて、答案用紙２行以内で答えよ。
④1990年代に入り、日本の金融機関では不良債権が発生し、その規模が拡大していった。そのプロセスについて、わが国のマクロ経済や金融市場の状況を中心に答案用紙５行以内で説明せよ。
⑤1997年第Ⅰ四半期からの景気後退期には、民間消費の不振が一つの特徴である。なぜ民間消費が低迷したかについて、考えられる要因を答案用紙５行以内でその内容を説明せよ。
６．今後の日本経済のあり方をめぐる最近の論調には、次のような主張がある。この講義であなたが学んだことから判断して、これらの主張は妥当であるか。妥当であるものに○、妥当でないものに×を付け、さらにその理由を答案用紙５行以内で付して答えなさい。ただし、この問題については、理由を付さない解答は無効とする。
①最近の景気対策で国債を増発して政府支出を増加させているために、資金が国債に吸収され利子率が上昇し、民間企業に回らず設備投資が減少する現象（クラウディング・アウト効果）が起きている。この悪影響を回避するには、政府支出の増加をやめるべきである。
②民間消費や民間の設備投資などの民間需要が低迷しているなかで、政府支出を減少させると（支出面から見た）GDPがさらに落ち込んで景気が悪化する。そのため、民間需要が自律的に回復するまでは、政府支出を増やしてGDPが落ち込まないようにするべきである。
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