第11章1.直接民主制
追加情報

ここでは、内容に関連して、本書に付け加える情報をお伝えします。

中位投票者定理について

定理の概要については、すでに本文で説明済ですが、中位投票者定理が日本の事例で成立しているか否かについて、最近の研究で
があります。
 この論文は、日本の都道府県財政における地方歳出総額で、中位投票者定理が成り立っているような状況にあるかを実証分析したものです。都道府県財政を分析対象とした理由は、(1)都道府県知事が有権者による直接投票で選出されている、(2)中位投票者の所得のデータ(中位所得)が公表されていないため、所得分布のデータが必要であり、これが都道府県レベルで得られる、(3)所得に対する課税である道府県民税が、道府県税の中で大きなウエイトを占めている、という中位投票者定理が成り立つための重要な仮定を、満たしているからです。実証分析の結果は、中位投票者の選好が反映された財政規模になっていることが示され、しかも平均所得(を稼得している個人の選好)よりも説明力が高いことが示されました。このことから、日本の都道府県財政の歳出規模は、中位投票者定理の含意と合致するものであることが認められました。

中位投票者定理に関するその他の文献については、この論文を参照してください。


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