土居丈朗のサイト

本トウの話



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 私は、職業柄、色々な本を読むことが多いとともに、自ら本を書く機会にも多く恵まれました。幸い、拙著でいくつかの賞も賜りました。そして、これまでにも書評を書く機会は多々ありましたが、2008年から読売新聞読書委員を拝命して、さらに多くの方に拙評を読んで頂けるようになりました。

 そこで、ふと気がついたのですが、メジャーのマスメディアで掲載された書評の優位性が以前に比べて低下しているのではないか、という印象(危機感!?)を持ちました。ブログや書店サイト上の寸評が席巻(横行!?)している現状が気になりました。メジャーのマスメディアの書評は、取り上げる本や評者を厳選し、まさにプロフェッショナリズムの権威と責任を裏づけとして書かれているのですが、不文律のお約束や形式(格式?)があるので率直な評価を書ききれない場合があります。ブログや書店サイト上の書評は、率直な評価を自由に書いている点で、時として核心をついたものがあるとはいえ、玉石混交で誰でも書ける単なる読書感想文に過ぎないものもあります。

 メジャーのマスメディアの書評は、紙媒体だけでなく、ウェブサイトでも読めるようになっています。それでも、プロフェッショナリズムの権威(肩書き!)や自負だけでは、インターネット上での影響力においてアマチュアの書評を凌駕できない時代のようですが、ただなすがままに看過ごすのもどうかと思い、この度、私の立場から本にまつわる話を書くページを設けることにしました。

 このページのタイトルは、本などにまつわる話(本等の話)と本などに関する実話(本当の話)をかけて名付けました。


 このサイトは、土居丈朗が個人の立場で運営しております。このページの内容は、私が関係する組織や部署の公式見解を示すものではありません。


2008年6月30日

 今月、私は読売新聞日曜日朝刊の読書欄で、与謝野馨著『堂々たる政治』と中川秀直著『官僚国家の崩壊』の書評を、合評で扱いました。当初の予定では、与謝野氏の著書だけを書評することになっていたのですが、読書委員の橋本五郎さん(日本テレビ ズームイン!!SUPERの月・火曜日にコメンテーターとしてもご活躍中)から、中川氏の著作も合わせて比較して書評してはどうかというご意見を頂き、私も納得してそうすることにしたのでした(読書委員の方々とは大変親しくさせて頂いているので、このページでは以下、読書委員の方は親しみを込めて「さん」と呼ばせて頂きます)。橋本さんは、読売新聞政治部長でもあられたので、政界の機微についてご存知で、日本銀行の副総裁や審議委員をめぐって経済学者が政界の渦中に巻き込まれる今日この頃なので、私も不必要に旗幟鮮明にしない方がよいという気持ちもありました。

 「財政再建派」を代表する与謝野氏と、「上げ潮派」を代表する中川氏の見解を、とかく対立したものと捉えられがちですが、その両派の対立の間で漁夫の利を得んと忍び寄っている「バラマキ派」という三すくみの政界の構図を、この書評を通じて描こうと思いました。両書の書評には紙幅に限りがあるので、より詳細には、NIKKEI NET Biz Plusで、アリとキリギリスの「納得!経済ニュース」と題したビジネスコラムの連載第20回「『骨太の方針』はどうなる?」等をご覧下さい。

 読売新聞書評はインターネットでも全文が閲覧できるようになっています。さらに、2008年からは、新s(あらたにす)のサイトで、朝日新聞日本経済新聞読売新聞の3紙の今週の書評が一覧できるようになっています。2008年3月14日のご挨拶でも述べたように、こうして一覧で見られるようになると、拙評で取り上げたいと思う本が、他紙で先に取り上げられないか、気になる今日この頃です。

 新s(あらたにす)の書評のページでは、各紙の書評の中で今週のトップ欄に載る本が、毎週1冊あります。もちろん、新s(あらたにす)の書評のページを見る方の目を引くということはありますが、そこに載ったからといってその評者に何かご褒美といった類のものは一切ありません。ただ、これは書評を扱う読売新聞文化部とは別の部署の方かどなたかが選んで載せているようで、どういう基準で決めているかは全く存じません。拙評がこのページでトップに載ることは、まるで宝くじに当たるかのような感じです。新s(あらたにす)が開設されて以来、拙評はまだ一度もトップに載ったことがありませんでした。

 そんな話を読書委員や文化部の方々と話をしていたとき、担当者の方に新s(あらたにす)の書評のページのレイアウトの情報を敢えて事前に一切聞かず、こちらから嘆願もせずに、私が書評したい本が新s(あらたにす)の書評のページでトップに載ったらどうする、という話となりました。私はとっさに、そのときにはささやかに家で妻と祝杯をあげる、と言いました。

 それから数週間して、6月15日の与謝野馨著『堂々たる政治』と中川秀直著『官僚国家の崩壊』の拙評が、幸いにも新s(あらたにす)の書評のページでトップに載ったのでした。公約(?)通りささやかに妻と祝杯をあげました。こんなことで喜ぶのも何ですが…



2008年7月8日

 読売新聞読書委員に就任して以来、「乞御高評」として出版社からの新刊本が多く送られてくるようになりました。私は、こちらから出版社にお願いしたことは全くありません。私が自ら書評したいと思いながらも手元にその本がなければ、読売新聞文化部の担当の方に直接言えば入手できる体制になっています。
 読売新聞は発行部数が多いですし、そこで書評で取り上げられると波及効果も大きいのでしょう。特に、私の専門柄、経済系の本は私が取り上げる可能性が高いと見ておられるのか、同じ出版社から出る本でも私の専門に近い本を選りすぐって送って下さるようです。それ以来、私の研究室は、どんどん本が増えて整理が追いつかない状態になってしまっています。

 私は経済系、と思いきや、書評する本は私が自由に選べるので、経済系にこだわってはいません。事実、かつてファン(マニヤやおたくではなく)だった鉄道の本を取り上げたり、仕事での出張でよく使う航空も私は強い関心があって取り上げたりしています。そんなことから、私の好みに気がついた一部の出版社からは、最近、鉄道系の本も送られてくるようになっています。さすがよくご覧になっておられますね。

 私としては、それ以外にも、今後は、私の趣味の絵画鑑賞にかかわる本や、1年間カリフォルニアに滞在して以来ハマっているワインにかかわる本や、娘がレッスンを受けるようになってから注目しているバレエにかかわる本も、書評する機会を密かに狙っています。歴史の本は、興味深く見ていますが、読書委員に専門家の先生が多くおられるので、お任せしています。こうして、日曜日の朝に読む書評として、お硬い本ばかり取り上げる評者という風に見られて読者に敬遠されることは避けたいと思いつつ、新しく出る本に目を通しているのです。



2008年7月22日

 この日は、委員会としての「夏休み」前最後の読売新聞読書委員会でした。私は、ちょうどこの日に今春学期の講義の試験を全て終えた(これからその採点が大変!)ところでした。読書委員会はどこで何をしているか、意外と公にされている書物や文書があまりないようですね。ネット検索で見ると、読売新聞文化部次長の鵜飼さんが、2006年5月にお話になっている読売ADレポートや、大学出版70 書評は語るぐらいでしか、読書委員会の内幕が紹介されているものはないようです。読書委員会の様子を写した写真は、ネット上では2006年12月25日付の読売新聞読書欄のページが唯一のようです。いずれも、私が読書委員になる前のものです。

 基本的にその頃と変わっていませんが、読売新聞読書委員会についてあまり詳しく書かれたものがないようなので、ここでご紹介しましょう(文化部の方にはご了解を頂いたので、紹介しても大丈夫でしょう)。読書委員会は、読売新聞本社にて隔週で開かれ、17時から部屋を開けて委員が徐々に集まってきます。各自が部屋の一角に並べられた新刊書の中から面白そうな本を何冊か選び出して、自席に戻ってゆっくりとそれらの本を読みながら、書評で扱えそうかどうか検討するのです。私にとって、こんなにゆっくりと本を読みふける時間が持てるのは、学生時代以来ではないかと思います。17時から来られる日は、検討する本をゆっくりと読めるだけの時間が取れますが、所用で18時半とか遅れて到着することもあり、その時はあまりその場では熟読できないので、ざっとその本をななめ読みして、書評で扱えるか検討する気が起きそうな本を持ち帰って検討することになります。各自が書評で扱えるかを検討する本(検討本)を選ぶと、他の委員にも目を通してもらうために、必ず回覧します。

 自分が書評を書きたい本だけでなく、他の委員の方に書評してもらいたい本も、選んでよいことになっていて、私が拙評で取り上げた本の中にはたまに他の委員からお勧め頂いた本もあります。書評の対象となる本は、原則として刊行から3ヶ月以内の本で、読書委員の著書は一切取り上げないことと、同一の著者の本は原則として1年に1冊しか取り上げないというルール(1年ルール)があります。なので、私が拙評で取り上げる際にも、著者の方が多産(本をたくさんお書きになられる)であられれば、今検討本としている本よりもっとよい本を近々出されるご予定がないか、可能な限り事前にチェックしています。

 回覧が終わった検討本は、正式に書評で扱ってよい本として認めるか、そしてどなたが担当するかを決める「せり」にかけられます。この場こそ、文字通り「委員会」と言ってよいでしょう。といっても、委員長がいるわけではなく、文化部デスクの片岡さんが司会をします。ちなみに、片岡さんは、『市町村合併で「地名」を殺すな』(洋泉社)というご著書をお書きになっておられます。「せり」では、検討本を選び出した委員が、その理由や意図などを話し、他の委員からもしあればコメントなどを述べます。特に異議がないときは、そのまま書評で扱う本の候補として認められます。検討本を選んだ理由の説明が特にうまいと私が思うのは、福岡伸一さん(青山学院大学教授)と磯田道史さん(茨城大学准教授)です。検討本を選んだ理由を口頭で説明するのですが、そのまま筆録すれば書評の原稿になるぐらい、明快でおもしろく検討本の魅力を説明されます。「せり」の前に検討本を読む時間はある程度あるとはいえ、短時間でよくそこまでできるなぁと感心します。

 検討本に対する委員の方々から出るコメントは、様々です。回覧されたときに読んで面白かったと書評で扱うことを支持するコメントもあれば、検討本を選んだ理由の説明から話が発展して、よもやま話で盛り上がることもあります。その著者はさほど経験もないのに知ったかぶって書いているから書評で取り上げない方がよいというコメントもあり、そうした場合は検討本として回覧されても、書評として扱わないことに決めることもあります。ある時、御厨貴さん(東京大学教授)が、ある本について、せっかくいい内容なのに編集が悪いから書評で扱うのはいかがか、と具体的に本の編集のまずさを指摘され、なるほど本を読む気にするには出版社の編集者の力量がこれほどまでにも影響するのかと感心したこともありました。

 「せり」は、時間がかかるときは21時ぐらいまでかかります。綿矢りささん(作家)は、帰りの最終の新幹線に間に合うように中座しなければならないぐらいの時刻です。もちろん、終了時刻はその時々の出版される新刊本の数にほぼ比例します。「2・8」といわれるように、2月は新刊本が少なかったですし、8月も新刊本が少ないこともありこの日から1ヶ月間読書委員会は夏休みで開かれません。ゴールデン・ウィーク直後も、連休中に印刷会社が休業するためか、新刊本が少ないときがありました。新刊本が少ないときは、検討本も少なくなり、「せり」も早めに終わります。

 聞くところによると、他の新聞で「委員会」形式で書評欄を製作しているのは、朝日新聞ぐらいで、日本経済新聞などは新聞社側が書評執筆者をその都度指名して製作しているようです。

 「せり」が終わると、読書委員会は閉会します。その後、時間がある読書委員や文化部の方々と一緒に、2次会、3次会へと繰り出します(文化部の方々は、まだお仕事が残っておられるのでそれを終えてから合流です)。私は、読書委員や文化部の方々との懇談がとても楽しみなので、ほとんど毎回3次会(!)まで顔を出します。読書委員会の場だけでなく、2次会、3次会での懇談を通じても、皆さんと仲良くなっています。実はこの日は、翌日7月23日に成田からボストンへ出張する予定があって、さすがに2次会までにしておこうと思ったのですが、渡辺靖さん(慶應義塾大学教授)に誘われ結局3次会まで行ってしまいました。渡辺さんとは、サントリー文化財団に助成して頂いている研究会のメンバーとしてご一緒しており、その研究会がらみでも深夜に及ぶ酒宴を共にした仲です。渡辺さんからは、3次会で、母校があってお詳しいボストン情報を教えてもらいました。3次会のお店には、私の故郷・大阪府吹田市のすぐ近くの池田市にある地酒「呉春」が置いてあり、なかなか粋なお店です。



2008年8月26日

 この日は、7月22日の前回会合以降の「夏休み」明け最初の読売新聞読書委員会でした。この日はちょっと特別です。それは、女優の小泉今日子さん(キョンキョンです!)が、雑誌『SWITCH』の取材で、読書委員会での一場面の写真撮影も兼ねていたからです。小泉さんは、このところ映画のお仕事などでお忙しく、読書委員会を欠席されていましたが、出席されるときにはだいたいよく座る席を中心に、撮影モードにセットされていました。
 そこで他の委員の皆さんとそわそわしながら話し始めたのが、小泉さんの隣に誰が座るか、ということです。小泉さんのお隣の席に座るということは、小泉さんの隣に写っている写真が雑誌に載る、ということですから、この日は何だか委員の皆さんは妙にミーハーモードです。読書委員会では、座席は自由席です。まず、小泉さんが出席されるときにはよく近くに座っていることからして、福岡伸一さん(青山学院大学教授)がいいだろう、という話になりました。あともう1席です。渡辺靖さん(慶應義塾大学教授)は、座りたそうでした。しかし、渡辺さんが、「僕は謹慎中だから、土居さんが座ればいい」(謹慎中という意味が微妙に不明なのですが…)という話になり、光栄なことに私が小泉さんのお隣に座らせて頂くことになりました。私の言い訳は、僕もいつも大体このあたりに座っているから、今日だけわざとそこに座ったわけではない、と(←単なる照れ隠しか)。

 検討本を回覧するときは、本を回しがてら、たいていお隣の委員の方とお話をするものです。小泉さんはオーラがあるので、皆さんどんな話をしてよいものやらと若干緊張するところがあるようで、これまでにも出席されているときを見ていると、小泉さんのお隣に座った委員の方の様子は、そんな風に見えました。その上、今回は、カメラマンが写真を撮っているので、なおさらという雰囲気でした。私は、高校生の頃受験勉強の傍ら、小泉さんのラジオ番組「オールナイトニッポン」を毎週聴いて育ちましたから、にわかキョンキョンファンではありませんので、念のため。そこで、私は小泉さんにおもむろに海外での仕事の話をしました。私も海外出張での話を交えながら、時差ぼけの話だとか小泉さんの海外ロケの話など、面白い話が聞けました。その様子を見ていた渡辺さんが、読書委員会閉会後、「土居さん、頑張ってたね」と茶化しながら私に感想を言ってくれました。

<追記:9月25日>

 上記の読書委員会の風景を写した写真が、『SWITCH』2008年10月号に掲載されました。写真には、小泉さんを中心に、福岡さんと梯久美子さん(ノンフィクション作家)と私が写っています。読書委員になったことの良い記念になります。

 それとは別に、福岡さんが、日本経済新聞夕刊のコラム欄「あすへの話題」で、毎週木曜日にコラムの連載が始まりました。毎回とても面白いです。特に、読書委員会がらみで知った福岡さんの話題が脳裏にあって、それとコラムにある話とがオーバーラップすることで、私の中の面白さが増幅されているかもしれません。福岡さんとは、読書委員になる前、2007年のサントリー学芸賞をともに受賞して授賞式でお目にかかったときからのご縁です。



2008年9月30日

 秋の訪れとともに、経済論壇では、日経・経済図書文化賞サントリー学芸賞の賞レースも佳境に入って参ります。私は、どの賞の審査委員も務めておらず、受賞対象となる本を2008年度は刊行しておらず、既に賞を頂いているということもあるので、ここで、受賞作品の大胆予想をしてみたいと思っております(天に唾する恐れ無きにしも非ずですが…)。以下では、順不同で候補作を挙げたいと思います。私より年配の方のご著書を論じる無礼は、年功に関わらず客観的に論じてよい学界の良いしきたりに従ったものとしてご容赦下さい。

 私として、読書委員になって以降刊行された本で、これは受賞作の候補に挙がりそうだと思った本は、よほど専門的過ぎて一般読者向けに書評を書くには不向きと思わない限り、拙評で取り上げることにしています。2008年の受賞対象となる図書は2007年下半期も入るのですが、私が読書委員になったのは2008年からなので、受賞作の候補に挙げられそうな本のうち、2008年上半期に刊行された本を挙げると、阿部彩・国枝繁樹・鈴木亘・林正義著『生活保護の経済分析』、神林龍編著『解雇規制の法と経済』が挙げられます。 この2作は、拙評でも取り上げましたので、内容の良い点はここでは割愛しますが、ただ難点は、著者や執筆者の数が多いことでしょうか。賞を授けるにしても、単著の著者か2、3名の著者に授けたいところでしょう。斎藤修著『比較経済発展論』は、経済史の分野では候補に挙げられて然るべき良書と思いますが、私は門外漢なのと、読書委員の中には歴史分野がお得意な方が多数おられるので、拙評では取り上げませんでした。石弘光著『現代税制改革史』、石弘光著『税制改革の渦中にあって』は、拙評で取り上げた良書ですが、石先生は既に受賞しておられるのでもちろん候補にはなりません(他の何か別の賞を受賞されるかもしれませんが)。

 私が読書委員になる前、つまり2007年下半期に刊行された本で、2008年の受賞候補に挙げられて然るべきと私が思う本は、順不同で、若杉隆平著『現代の国際貿易』、西村和雄・矢野誠著『マクロ経済動学』、川越敏司『実験経済学』が挙げられます。これらの著者の方々は、学界での業績が高く評価されており、まだ受賞されておられないのが不思議なぐらいです。ただ、これらは教科書的なので、その点が審査委員の方々にどう評価されるかが気になります。石田成則著『老後所得保障の経済分析』、牧厚志著『消費者行動の実証分析』も、候補に挙げられて然るべき良書と思います。

 以上は、私の単なる個人的な予想ですから、外れたとしても私は公に何ら責任は負いませんので、あしからず。



2008年11月3日

 遅ればせながら、後付みたいですが、その時に残したメモを基に更新しました(2009年1月9日)。

 この日は、日経・経済図書文化賞の受賞図書が発表されました。先の私の予想は、受賞作5冊中3冊が当たりました。もちろん、私は審査委員でもなく、インサイダー情報もないので、私の印象で予想したものでした。阿部彩・国枝繁樹・鈴木亘・林正義著『生活保護の経済分析』、斎藤修著『比較経済発展論』は、私が読書委員になった後の2008年上半期に刊行されたものとして挙げていました。西村和雄・矢野誠著『マクロ経済動学』は、私が読書委員になる前の2007年下半期に刊行されたものとして挙げていました。

 もう1つの受賞作『年金制度は誰のものか』の著者の西沢和彦さんは、日本経済新聞の年金制度改革研究会でご一緒していて、現行年金制度の問題点や年金改革の必要性についてこの受賞作で改めて評価を受けたことを嬉しく思います。

 それから、10月14日に、2008年のノーベル経済学賞を、クルーグマン・プリンストン大学教授に授与することが決まりました。読売新聞読書欄の拙評で、8月31日(日)にポール・R.クルーグマン著『格差はつくられた』を取り上げていました。クルーグマン教授の業績は、国際貿易などもはやいうまでもなく優れたものですが、受賞理由の業績はヘルプマン・ハーバード大学教授やグロスマン・プリンストン大学教授も同様にあるところが単独の受賞であることと、アメリカ大統領選挙の最中の年で、クルーグマン教授が共和党批判と民主党支持を鮮明にしている年に受賞ということは、若干驚きました。



2008年12月2日

 この日の読売新聞読書委員会は、2008年の読書委員のメンバーでの最後の会合となりました。委員はほぼ半数が交代となりますが、任期の期間がずれていた関係で、この12月で退任される委員と、2009年3月で退任される委員とがおられます。12月で退任されるのは、河合祥一郎さん(東京大学准教授)、佐藤卓己さん(京都大学准教授)、御厨貴さん(東京大学教授)、米本昌平さん(東大先端研特任教授)の4人です。1年間ご一緒させて頂き、「せり」の前の選書の段階での立ち話や、「せり」の場での興味深いコメントなど色々と印象深く残っています。特に、佐藤さんとは、書評とは関係ない話ですが、私が経済学者ということもあってか、株とか債券とか何かいい投資先はあるかという話をこの年の中ごろにしたことをよく覚えています。

 これは私の持論ですが、もし今後確実に値上がりしたり高利回りになったりする投資先が今あったとして、それほど本当によい投資先ならば、1年待ってもまだ値上がりしたり高利回りだったりするはずなので、今は待っていてもさほど悪くはありません。例えば、今後5年間値上がり傾向だったり高利回りが持続したりする投資先があっても、1年待ったところで残り4年はその恩恵を受けられます。さりとて、金融商品は確実に値上がりしたり高利回りになるわけではなく、この先1年で値下がりしたり損が出たりする可能性もあります。そう考えれば、今よさ気な投資先に投じるよりも、経済が着実に上向きになっていると実感できるような時期(1年後?2年後?)まで少し待つべく、元本割れしない銀行預金など手堅いもので置いておくのもさほど悪くない話ではないか、ということです。私はそんな話を、佐藤さんにしました。すると、半年ぐらい経ってから、佐藤さんから、あの時いいアドバイスをもらってよかった、というお礼?の言葉を頂きました。別に私は、この9月にはリーマン・ショックが起こり、株価は暴落することを予期できたわけでは全くなかったのですが、私自身も含めて、結局株式や債券で運用するより、預金に塩漬けにしていた方がましだった、という皮肉な結果になってしまいました。

 話を元に戻して、12月で退任される方は、この日に書評をする本を選ぶにも、12月中に掲載する形にならなければ読売新聞で書評をする機会を逸してしまうのです。通常、委員会の日に選んで「せり」に出した本の書評が掲載されるのは、4週間前後ほど後になります。委員会にご出席なさっても、すぐに書ける(この日に「せり」に出してすぐに来週か再来週が原稿提出の締め切りとなる)形でないといけない、というような短期的なスケジュール感を想像すると、妙な気分になりました。

 ふと我に返ると、私が読書委員をさせて頂くのも残り1年で、来年の今頃はこういうことなのか、と思い、余命宣告とまでは言わないまでも、一抹の寂しさを感じました。とはいえ、まだ1年間読書委員をさせて頂くのですから、その間は、読者の皆様に喜んで頂けるような書評を書き、存分に楽しませて頂こうと思い改めました。2009年には私が関心を寄せたくなるよい本がどしどしと刊行されることを願っています。



2008年12月16日

 この日の読売新聞読書委員会は、2009年からの新任の読書委員が加わり、新しい雰囲気での会合となりました。2008年はまだ終わっていませんが、もう新年が訪れたかのような感じです。1月からの新任の方は、池内了さん(総合研究大学院大学理事)、井上荒野さん(作家)、井上寿一さん(学習院大学教授)、片山杜秀さん(慶応義塾大学准教授)、北上次郎さん(文芸評論家)、黒岩比佐子さん(ノンフィクション作家)、本郷和人さん(東京大学准教授)の7人です。2009年3月までの任期の委員もおられるので、総勢25名と2009年3月まではいつもより人数が多い体制となります。

 この日の「せり」が始まると、最初の1冊は新任の方が選んだ本が取り上げられました。ここで、検討本を選び出した委員が、その理由や意図などを話し、他の委員からもしあればコメントなどを述べる、という展開になるのですが、新任の方は初めてのことなので、これまで務めてきた委員が「お手本」を見せることになりました。ちょうど次の本が春日武彦さん(精神科医、東京未来大学教授)だったので、春日さんがいつものように面白く理由を述べられ、みごとに「お手本」を示されました。

 委員会が終わり、新任の方とも親しくお話したいと思い、2次会に赴きました。この日からお店の都合で2次会の会場が新しいお店に変わったので、なおさらメンバーが変わった新しい読書委員会という気分になりました。ただ、新任の方も年末でお忙しいこともあってか、いつもの3次会のお店に行くと、結局新任の方は1人も来られず、橋本五郎さん(読売新聞特別編集委員)、福岡伸一さん(青山学院大学教授)、松山巌さん(評論家、作家)、本村凌二さん(東京大学教授)、渡辺靖さん(慶應義塾大学教授)と読売新聞文化部の方々といったいつものメンバーになってしまいました。次回こそは新任の方も3次会に来て頂きたいと思います。



2008年12月22日

 毎年、年末になると、有識者の選出によるベスト経済書のランキングの発表が経済誌であります。こうしたランキング発表は概ね半年に一度あります。私もその評者の1人として加わって、よかったと思う本を順位をつけて3冊挙げて回答しました。その結果は、『週刊東洋経済』2008年12月27日・2009年1月3日新春合併特大号の「2008年決定版経済・経営書ベスト100」や、『週刊ダイヤモンド』12月27日/1月3日合併号の「経済学者・経営学者・エコノミスト213人が選んだ2008年の『ベスト経済書』」に掲載されました。これらの評者からの回答は、ケインズの美人投票のように、1位になる本を当てるようなものではないので、純粋に自分がよいと思った本を挙げればよいのですが、私が挙げる本はしばしば順位が低く、マイナーな本だったりします。今回も、私が挙げた本はやはりあまり高い順位のものではありませんでした。ちなみに、2007年に日経・経済図書文化賞サントリー学芸賞を同時受賞した拙著『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社刊)も、これらのランキングではかなり低い順位でした(ランキングに入っていただけでもよかったとは言えますが)。東京大学教授の吉川洋先生が、私に、「売れ行きがよい本を高く評価するというのなら、こうした学術賞は要らないよ」(学術賞は売れ行きがよいからといって与えられるものではない)、と仰ったことを思い出しました。

 私が思うに、このランキングで上位に挙がる本は、ベストセラーになった本が多く、よく売れたから上位に挙がるのか、とも勘ぐったりします(言うまでもなく、雑誌編集部がそれを意図しているはずはありません)。もちろん、このランキングは、販売部数のランキングではありませんから、売れ行きとは無関係です。しかし、センスを疑うような本が(売れ行きがよいせいか)ランキングの上位に挙がっていたりします。評価をする有識者は、売れ行きの如何に関わらず、もっとしっかりとよい本を挙げよ、と言いたくなります。評者は、売れ行きがよいとの情報を新聞等で折に触れて知ることができます。確かに、売れ行きがよい本には内容もよいものもありますが、いかがなものかと思う本もあります。売れ行きに関する情報がメインになってこれらの回答をしている評者が多いのではないか、もしそうならば有識者といいながら(売れ行きに関わらず)よい本を自らの見識で選ぶという目利きの能力はないのか、と思います。もしそうでないならば、これらのランキングで、売れ行きは芳しくないが有識者が高く評価したという本がもっと多く上位に入っていてもおかしくありません。私は、むしろ売れ行きを度外視して、よい本として是非多くの読者に読んでもらいたいと思う本を挙げています。そして、読売新聞の読書委員としても、そういう気概で臨んでいます。

 2008年のベスト経済書として、『週刊東洋経済』で1位になったのは、竹森俊平著『資本主義は嫌いですか』(日本経済新聞出版社)でした。竹森先生は、私の学部の同僚で、研究室も同じ階にあるので、しばしばお話しします。私が当学部に移籍するときにも、蔭ながらお世話になったりもしました。この本は、私が著者と近い関係で書評をしてはお手盛りになる恐れがあることから拙評は書いていませんが、とてもよい本だと思います(竹森先生から直接頂戴致しました)。1位になるにふさわしい本だと思います。もちろん、よく売れているようで、「土居君、あの本、また売れてるよ」と嬉しそうに話しかけてくれていました。「また」というのは、『経済論戦は甦る』(日本経済新聞出版社)もよく売れたことを意図します。竹森先生は、同書で、第4回読売・吉野作造賞を受賞され、私も授賞式にご招待頂きました。同書で、竹森先生の読者を引き込むストーリーテラーぶりが世に知れたのですが、語り口のうまさは実はそれ以前からでした。同書よりも前に刊行された、『世界経済の謎』(東洋経済新報社)に既にその才気が見出せます。この本は、私が1999年にちょうど当学部に着任したばかりのときに執筆中で、原稿段階から読ませて頂き、コメントをしたりしていました。今から思うと、懐かしささえ感じます。

 『週刊ダイヤモンド』で1位になったのは、白川方明著『現代の金融政策』(日本経済新聞出版社)でした。この本は、4月20日(日)の読売新聞読書欄に拙評を書きました。もちろん、私は、売れ行きとは関係なく、書評するに値する本だと思っています。

 このように、売れ行きがよい本には内容もよいものもあります。とはいえ、いつもそうであるわけではありません。今後、こうしたランキングでは、是非とも有識者として見識ある形で本を挙げて頂き、売れ行きと無関係に、内容のよい本が上位に挙がることを願っています。


読売新聞読書委員(2008年12月まで:敬称略・五十音順)
 磯田道史(日本史家、茨城大学准教授)
 岩間陽子(国際政治学者、政策研究大学院大学准教授)
 小倉紀蔵(韓国思想研究家、京都大学准教授)
 小野正嗣(作家、明治学院大学専任講師)
 梯久美子(ノンフィクション作家)
 春日武彦(精神科医、東京未来大学教授)
 河合祥一郎(英文学者、東京大学准教授)
 小泉今日子(女優)
 佐藤卓己(メディア社会学者、京都大学准教授)
 田中純(思想史家、東京大学准教授)
 土居丈朗(経済学者、慶応義塾大学准教授)
 西川美和(映画監督)
 福岡伸一(分子生物学者、青山学院大学教授)
 松山巖(評論家・作家)
 三浦しをん(作家)
 御厨貴(歴史家・政治学者、東京大学教授)
 本村凌二(西洋史家、東京大学教授)
 米本昌平(科学史家、東大先端研特任教授)
 渡辺靖(文化人類学者、慶応義塾大学教授)
 綿矢りさ(作家)
 ………………………………………
 榧野信治 読売新聞社論説副委員長
 橋本五郎 読売新聞社特別編集委員

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2009年1月6日

 この日は、2009年最初の読売新聞読書委員会でした。この日の会合では、新任の委員の方々も、慣れてこられたのか、他の委員が選んだ検討本に対して積極的にコメントを仰られて、盛り上がりました。私が思うに、この日の会合のMVPは岩間陽子さん(政策研究大学院大学准教授)ではないでしょうか(何も、毎回MVPがいたり、選ばれたりする仕組みはありませんが)。岩間さんは私と同じく2年目の委員で、昨年までの会合よりもさらに活発にいくつかの本に対して興味深い(時に鋭い)コメントを仰っておられました。

 読書委員会が終わり、2次会の席で何人かの方々と話したことを総合すると、岩間さんを始め2年生委員(私も含む)が、新任の1年生委員の活発さに刺激されて、意識するかしないかに関わらず、「先輩」然として頑張ったということではないか、とのことでした。まぁ、学校での学年の変わり目の時期の雰囲気に似たような感じといったところでしょうか。これからの読書委員会でも、1年目、2年目に関わりなく、面白い議論が展開され、書評の質を高める形で読者の皆様に貢献できるようになることを期待したいところです。


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2009年2月1日

 この日の読売新聞朝刊の読書欄には、小泉今日子さんの椰月美智子著『枝付き干し葡萄とワイングラス』についての書評が掲載されました。私は、読書委員の方々の書評を毎週楽しく読ませて頂いていて、その書評の書きぶりに同じ読書委員としていつも「感心」しています。ちなみに、前述のように、読書委員会では、読書欄にで取り上げる本を選定するまでは委員の間で関知しているのですが、各委員が書評をどのように書くかは、(委員会の場での議論で概ね予想はできるものの)日曜日朝刊の紙面を見るまで読書委員としてはわかりません。
 私が「感心」したことをこのページに書くと、書評に対する「感心」ばかりを書いてしまいそうで、1つ1つ取り上げることはしていません。ただ、小泉さんの今回の書評は、人生観がにじみ出ていて「感動」したので、ちょっとだけここで触れたいと思いました。今、読売新聞日曜日朝刊の読書欄では、読書委員会の内輪の言葉で「小評(しょうひょう)」、「大評(だいひょう)」、「メガ評」と呼ぶ書評の枠があります。メガ評は、毎月1回第1日曜日に評者の顔写真付きで大きく取り上げる書評で、対象とする本について著者や作品の背景などたっぷりと書くことができます。読書委員が書く書評の中では最も字数が多い枠です。大評は、本の表紙の写真付きで比較的多く書くことができる書評枠です。この枠の数が最も多いので、読書委員が書くときは大評で書くのが標準的です。小評は、読書委員が書く書評の枠としては一番小さいもので、本の表紙の写真はなく、1つか2つぐらい評者のコメントを書くとそれでほぼ字数が埋まってしまう書評です。大評で取り上げるほどではないが、新聞の書評としては是非紹介しておきたい本が、小評で取り上げられるパターンもままありますし、書評をしたいが長々と書くほど時間的余裕がないお忙しい読書委員が、さらっと書ける感じで書評するのに向いている枠でもあります。私もときどき小評で書評を書きますが、限られた字数の中で、取り上げた本のエッセンスを端的に伝えたり、書評の読者に取り上げた本を読む気にさせたりするのに、とても工夫が要るのが、小評の特徴です。くどくどとした説明はできません。
 さて、小泉さんの今回の書評は、小評の枠での書評です。小評という字数が限られた枠の中で、本の内容に触れつつもご自身の人生(夫婦!?)観を表していて、私はその表現ぶりに「ドキッ」としました。婉曲的な表現でも胸の内が率直に伝わってくる書評で、感動しました。それは、婉曲的でありながらも微妙に踏み込んだ書きぶりで胸の内をうまく伝える書き方を、私は高く評価する傾向にあるからなのかもしれません。



2009年2月17日

 毎年2月17日は、当学部の入学試験が行われる日です。それは、17日が日曜日であろうと何曜日であろうと、毎年行なわれます。これは、在京私学の間での暗黙の了解とも言うべきもので、ある大学が入試日を変えると、併願の関係で受験者数に大きな影響が出る場合があることなどに配慮しているからともいえます。入試の当日は、学部の教員は総動員で、それぞれの作業を担います。私も(何をしたかは極秘の)作業を終えた後、読売新聞読書委員会に出席しました。私は、実は15日にアメリカ・カリフォルニアへの海外出張から帰国したばかりでした。
 当大学は、毎年この時期に1学部ずつ日にちをずらして入学試験を実施しています。同じ読売新聞読書委員の片山杜秀さん(慶応義塾大学准教授)も法学部に所属しておられるので、法学部の入学試験ではかり出されたようです。そんなこともあってか、検討本を回覧している間、慶應の入試話で、片山さんと私の間に座っておられた黒岩比佐子さん(ノンフィクション作家)をも交えて一頻りしていました。ちなみに、黒岩さんは当大学文学部卒業の塾員(慶應ならではの呼称で卒業生の意)です。
 そうこうしていると、読書委員には大学教員も多いので、入試話が膨らんでゆきました。たいてい、大学関係者の間で入試話をすると、入試にまつわる愚痴話が続々と出てきます。入試関係で警備の仕事をさせられたが、警備なら民間の警備会社の人を雇った方がプロフェッショナルでよほどうまくできるのに、(学問で学位をとっただけで)警備は素人の大学教員が直営でやってどうするんだ、とか、大学入試には、前近代的というか、不合理な仕事が結構あって、それがまたレガシーになったりして改善が容易でなくなかなか難しいのです。受験生の皆様、すみません! 受験生として人生を賭して入学試験を受けに来ているのに、その裏方をしている大学教員は愚痴っぽく仕事をしていることもあったりして… でも、肉体的に大変なこともあることはご理解下さいね。
 読書委員会が終わってからも、この季節は大学入試の時期なので、井上寿一さん(学習院大学教授)とも2次会でお話していると、学習院では院長や学部長は入試前日から泊り込みで備えるのだそうです。入試当日は、朝早く自宅から出勤しても支障はなさそうなのですが、結束を確認するとか気合を入れて臨むとか、えもいわれぬ何かがあってか、泊り込むという態度で示そうとするのだそうです。慶應もこれとほとんど同じようなことがありますね。


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2009年3月10日

 この日からこの春休み期間で3度目の海外出張に出かけることになりました。今回は、International Atlantic Economic Society第67回大会で、井堀利宏・東京大学教授との共同論文を発表するとともに、討論者として参加するために、イタリア・ローマに赴きます。
 この日付で発売された『文藝春秋』2009年4月号の、「これが日本最強内閣だ」と題した特集で、各界識者33名&政治記者84名アンケートの中に、同じ読売新聞読書委員でもある岩間陽子さん(政策研究大学院大学准教授)が回答しておられました。これは、アンケートの回答者が、総理大臣を始め閣僚として適任と思う人物を推挙するするというもののようです。岩間さんは、なんと不肖私を財務大臣として挙げて下さいました。そういえば、何回か前の読書委員会の場で、「土居さんをこのアンケートで経済財政担当大臣に挙げたい」旨のお話をされておられたようなことを思い出しました。滅相もないと、お答えしていましたが、いつの間にか格上げ(!?)されていました。いやはや、恐縮至極です。
 なれるはずもありませんが、もし財務大臣になったならば、拙稿「財政再建には、イギリス財務省のあり方に倣え」, 『フォーサイト』, 2006年2月号, 新潮社, 91-93頁、のアイディアを是非実行してみたいと思います。どなたがなろうと、洋の東西を問わず、財務大臣には責任と強い権限が与えられなければ、納税者の皆様に申し訳が立たないというものでしょう。



The Westin Excelsior, Rome
クリックすると写真を拡大できます 2009年3月14日

 14日をもってInternational Atlantic Economic Society第67回大会が閉会し、研究発表と討論は無事終わりました。その晩、井堀利宏・東京大学教授と、レストランCesarinaで夕食をともにしました。Cesarinaは、前回の読売新聞読書委員会のときに、古代ローマ史がご専門で読書委員の本村凌二さん(東京大学教授)に伺ってご推薦頂きました。手書きで地図も書いて頂き、幸い宿泊先のホテルから歩いていける距離だったので、赴きました。
 ただ、厄介なのがローマ時間でのディナータイム。18時なぞは大半のレストランはまだ店すら開けていないですし、19時を過ぎてからちらほらと開く店が出てくるという感じです。Cesarinaは、ウェブサイトに営業時間が載っていないので、困りました。でも、19時ぐらいから開いていると高をくくって店に赴いたら、19時半からでした。井堀先生をお連れして、30分も店の前で待っているというのもまずいので、時間をつぶすべく、Cesarinaに程近い、The Westin Excelsior, Romeに向かいました。そう、このホテルは、前財務大臣がワイン等を「口は付けたが、ごっくんはしていない」昼食をとったレストランDoneyがあり、「もうろう会見」を行ったところです(このニュースソースは、読売新聞とは一切関係ありません)。さすが、5つ星ホテルで、重厚なロビーです。このページにはこれまで文字ばかりで写真が1枚もないので、ここぞとばかりに(!?)私が撮った写真を貼り付けてみました(「本当」の話ではありますが、「本等」の話とは関係がない写真なのに…)。
Doney Restaurant
クリックすると写真を拡大できます  この時期は、円高ユーロ安も追い風となり、春休みのせいか大学生を中心に若い日本人が大挙してローマに押しかけていて、ローマの街で道を歩いていると日本人とすれ違うことが多かったのですが、さすがにこのホテルには若い日本人は押しかけてきていなかったです(若人たちは観光、我々は仕事!!)。我々は、このホテルに宿泊したわけでも、そのレストランで食事をしたわけでもありません。ロビーで15分ほど休憩して、再びCesarinaに向かいました。
 Cesarinaは、ローマの地元料理も出すお店で、サルティンボッカとハウスワイン(Vino di Casa)を堪能しました。やはり、イタリアのレストランでワインを頂くなら、まずはそのお店のこだわりのあるハウスワイン(Vino di Casa)を頂くのがいいですね。
 このままだと、読書とは何も関係ない話で終わってしまいそうなので、最後に関係あることを一言。「もうろう会見」がらみで、素人の私よりも社内で情報のやり取りが陰に陽にありそうな文化部の記者の方が少しはお詳しいかと思いきや、文化部の社内における独特な地位もあってか、経済部方面からの情報は特に何もないのだそうです。「ごっくん」したかしないかは、ローマに赴いた私の方がむしろよく知っていたりして… ちなみに、前財務大臣についてのローマ当地での報道は、JMM(Japan Mail Media)でも書きましたが、どちらかというと同情的であの理由で辞めさせられてかわいそうにといったところのようです。



2009年3月15日

 International Atlantic Economic Society第67回大会への出席を終え、ローマから帰国の途に就きました。フランクフルト経由での帰国です。フランクフルト空港のラウンジには、14日付の新聞が置いてありました。14日付の朝日新聞朝刊の記事「中谷巌氏『転向』の波紋 行き過ぎた市場経済を批判」を読みました。その記事についての情報は、時差の関係で先に日本で読めた家族から事前にメールで聞いていました。
 その記事の中に、読売新聞1月11日(日)朝刊に掲載された拙評中谷巌著『資本主義はなぜ自壊したのか』が取り上げられていました。拙評は、好意的に論評としたと書かれていました。ちなみに、私はこの記事を書いた記者には一切取材を受けていませんし、その依頼も事前の了解もありませんでした。通例で言えば、こうした記事は事前の了解がなく掲載されたりするので、私としてどうこう言うつもりはありません。
 ただ、拙評をもう少し深読みして欲しかったというのが、この記事を読んだ私の感想です。私は大阪大学経済学部2年生のときに、中谷先生からマクロ経済学の講義を直に聴いた者であり、それが今書評を書く身分になったというのも、何ともありがたいことだと思っています。直接講義を聴いた者として、それから新聞の書評欄で扱う本には(本の販売促進という観点から)悪評を書かないというお約束から、読売新聞の拙評は、好意的に評価するように工夫をして書きました。したがって、読売新聞の拙評には、露骨に書いておらず、行間を読んで頂くという他ないのですが、中谷先生は、もともと私が受講した頃まで(1980年代)は「日本的経営是認論」を唱えておられました。日本でバブルが絶頂の頃、アメリカの企業が落ちぶれているのは、アメリカ企業の経営の仕方が悪いからで、それは日本企業の良いところを見習えばよい、というご主張でした。そして、今般刊行された本で、かつてご主張なされた「日本的経営論」の立場に戻られた、というのが私の理解です。
 読売新聞の拙評をよく読んで頂ければわかりますが、私として「転向」という表現に肯定も否定もしていません。そして、「日本人の気質に合った日本にふさわしい経済構造の構築を訴えかけている。」と拙評を結んでいるのは、まさに、中谷先生がかつてご主張なさっておられた立場に戻られたことを意図して書いた文です。記事にする際には、そうした行間を読んで頂きたかったですね。



2009年3月16日

 フランクフルト空港から帰国便に乗り、機内で各紙の書評欄を読み比べをしました。帰国便の機内には、15日付の各紙が置いてありました。もちろん、大学の図書館等でも読み比べはできるのですが、日曜日に飛行機に搭乗すると、各紙の書評欄を一度に読むことができるので便利ですね。帰国便の機内では時間的余裕があるので、15日付の各紙の書評欄をじっくりと読みました。ちなみに、15日付の読売新聞読書欄には、拙評レオナルド・L.ベリー、ケント・D.セルトマン著『すべてのサービスは患者のために』が掲載されていました。今回の海外出張中メールで校正のやり取りをして仕上げました。
 朝日新聞日本経済新聞読売新聞の3紙の今週の書評に限っては、新s(あらたにす)のサイトで一覧できるのですが、日曜日当日はさすがにまだウェブサイト上には新しい書評はアップされていません。それに、各紙の書評欄の紙面上のレイアウトにもそれぞれ特徴がありますが、そのレイアウトは新s(あらたにす)今週の書評のページでは見ることができません。そんなわけで、やはり直に紙に触れて紙面で各紙の書評欄を読むのは、また格別な感慨があります。
 読み比べての私の感想を述べるのは、身贔屓になったりするのでここでは詳述しませんが、書評で取り上げる本の専門家から見た評判と、その書評を書く評者が、一番の見所です。取り上げられて当然というほど前評判の高い本が、適任の評者によって書かれた書評は、読み応えがありますし、それが書評欄の紙面の目立つところに掲載されていれば、書評欄の構成のうまさを感じます。逆に、こんな本を取り上げていかがなものか、という本が取り上げられていたり、その評者以外に適任者がいたろうに、と思うことも間々あります(身贔屓ついでで言わせて頂くと、私は読書委員会にはほぼ出席しているので取り上げられる本を事前にほぼ見ていますが、読売新聞読書欄ではそうした本はないと確信しています)。身贔屓で手前味噌ばかりではいけないので、読売新聞読書欄のアキレス腱をいえば、読書委員が熱心に自らの検討本を書評で数多く取り上げようとする(!?)があまり、他紙に当該本の書評が先に掲載されることが間々あるということでしょうか(もちろん、早く掲載すればよいという次元の問題ではありませんが)。



2009年3月17日

 この日は、この3月で退任される読書委員が出席する最後の読売新聞読書委員会となりました。そういう特別な読書委員会なのできちんと間に合うよう、学会出席のための出張を16日に帰国できるように旅程を組みました。総勢25名という体制は3月末までです。磯田道史さん(茨城大学准教授)、梯久美子さん(ノンフィクション作家)、西川美和さん(映画監督)、三浦しをんさん(作家)が退任されます。この日は読書委員会を早めに終え、送別会が催されました。送別会では、退任される委員の方を中心に、日ごろよりもたくさんお話をしました。読書委員会の最中は、お話ができてもせいぜい隣近所の席にいる方ぐらいで、向かい側にお座りの委員の方とはちょっと距離があって話しにくいのです。その分、いつもは2次会、3次会で話をしています。
 そういえば、先日までの海外出張中、機内で西川さんが監督をされた映画「ゆれる」が放映されていたのでまたしても見てしまいました。私が読書委員をご一緒した昨年は、次回監督作品「Dear Doctor」を製作しておられて、今はその公開準備に忙しいとのことです。今年初夏には公開されるとのことで、是非見に行きたいです。上映してくれる劇場は、上映時間などにも左右されるのだそうで、2時間を切るか切らないかで上映回数が変わってきて、それが影響するのだそうです。監督として、収めたシーンを残す(そうすると上映時間が伸びる)か上映時間を気にしてカットするか、という決断があるのだとか。読書委員の中で、西川さんに映画のシーンに出させてほしいとお願いし、見事に念願かなって「Dear Doctor」で「スクリーンデビュー」する方がおられるのですが、これは詳細をここで言ってよいかわからないので、この程度の記述に止めておきましょう。
 この3月で3人の女性委員が退任されるので、女性委員の比率がちょっと下がってしまいます。別に、国の審議会の委員でもあるまいし、女性比率に目安があるわけでも何でもないようですが、今年1月の就任には間に合わなかったので、この4月から新たな女性読書委員が加わるという噂も小耳に挟みましたが、それはないとのことでした。



2009年3月31日

 マスコミは、曜日の都合もあって4月1日からの新年度開始が事実上前倒しされて、この週の月曜日、3月30日から新年度の体制が始まりました。紙面の改編、番組の改編なども30日に行われました。読売新聞読書委員会も、これまで読書委員会担当デスクだった片岡さんが異動され、新たに時田さんが担当デスクに就かれました。3月29日付の読売新聞読書欄に掲載された、片岡さん(とは読者の方々にはすぐにはわからない「イニシャル」表記ですが)の異動のご挨拶を感慨深く読みました。新旧デスクの異動のご挨拶は、既に前回の読書委員会で済んでいて、この日の「せり」から時田さんが早速仕切ることとなりました。この日最後まで出席された女性委員は、黒岩比佐子さん(ノンフィクション作家)だけで、後は皆男性委員でした。隣に座っていた渡辺靖さん(慶応義塾大学教授)は、それを見て"gender imbalance"とつぶやいておられました。読書委員会では、口裏を合わせておられるわけではないと思うのですが、女性委員は、出席される方が多い日はたくさんいらっしゃるのに、少ない日はお1人だったりどなたもおられなかったりして、何故か(男性にはわからない仕組みで!?)出欠がシンクロナイズする傾向があるように私には思えます。昨年5月のゴールデン・ウィークの谷間の日に開催された読書委員会では、休みの時期だからお忙しい委員も出席なさるのではと思いきや、女性委員は全員欠席ということがありました。
 進行役として初「せり」となる時田さんは、終了時間を気にしておられたようですが、委員の方々は相変わらず「舌」好調でした。この日の(不肖私が勝手に選んだ)MVPは、文句なく北上次郎さん(文芸評論家)でしょう(前にも書きましたが、委員会で毎回、MVPがいたり選ばれたりする仕組みは一切ありません)。私の心の中で選んだだけのつもりでしたが、つい隣に座っていた渡辺さんだけにはしゃべってしまいました(といいながら、このページで皆に披露していたりして…)。北上さんが検討本として取り上げられた本の著者について、非常に明確に評価を述べられ、痛快でした。「この作家は、第一作は良かったけどその後5作ほど面白くなくて、今度この本を読んで(面白かったら取り上げたいが)面白くなければもう読むのをやめようかと」とか、「もう一越え面白ければという作品を何作か続けて書いている作家の本は、(今度こそは傑作かもしれないと)新作が出る度にずっと読み続けなければならないから大変だ」といった旨の作品の見方は、私の本職にも有益な示唆がありました(ちなみに、読書委員会では議事録などは取っていませんから、この文言は、私の記憶のみに頼ったもので、文責は私にありますので悪しからず)。
 そう、この3月31日は私が当学部准教授として最後の日となりました。准教授として最後の仕事は、読売新聞読書委員会だった、ということです。そして、読書委員会が終わるといつものように2次会、3次会という予定でしたが、連絡の行き違いで、いつもの2次会の店の予約がうまく入っておらず、そのまま「3次会の店」に直行することになりました。そして、「3次会の店」で、私は当学部准教授として最後の日を終え、教授として最初の日を迎えるのでした。


読売新聞読書委員(2009年1〜3月:敬称略・五十音順)
 池内了(宇宙物理学者、総合研究大学院大学理事)
 磯田道史(日本史家、茨城大学准教授)
 井上荒野(作家)
 井上寿一(日本近現代史家、学習院大学教授)
 岩間陽子(国際政治学者、政策研究大学院大学准教授)
 小倉紀蔵(韓国思想研究家、京都大学准教授)
 小野正嗣(作家、明治学院大学専任講師)
 梯久美子(ノンフィクション作家)
 春日武彦(精神科医、東京未来大学教授)
 片山杜秀(音楽評論家・日本思想史研究者、慶応義塾大学准教授)
 北上次郎(文芸評論家)
 黒岩比佐子(ノンフィクション作家)
 小泉今日子(女優)
 田中純(思想史家、東京大学准教授)
 土居丈朗(経済学者、慶応義塾大学准教授)
 西川美和(映画監督)
 福岡伸一(分子生物学者、青山学院大学教授)
 本郷和人(日本中世史家、東京大学准教授)
 松山巖(評論家・作家)
 三浦しをん(作家)
 本村凌二(西洋史家、東京大学教授)
 渡辺靖(文化人類学者、慶応義塾大学教授)
 綿矢りさ(作家)
 ………………………………………
 榧野信治 読売新聞社論説副委員長
 橋本五郎 読売新聞社特別編集委員



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2009年4月1日

 3月31日の読書委員会の後の「3次会の店」で、4月1日午前0時を迎えました。私の当学部教授としての初仕事は、読書委員や読売新聞文化部の方々に、「就任御挨拶」と記した私の教授の名刺をお渡ししてご挨拶することでした。縦書きの名刺の右肩に赤字で「就任御挨拶」と記した名刺を渡すしきたりは、いかにも「霞が関」のものです。中央省庁の官僚の方々は、異動するとしばしばそうなさっておられます。大学を移籍したわけでもなく、単に昇格しただけで、それをお伝えするのに、面と向かって口頭で申し上げるのもどうかという場面では、さりげなく名刺にそう記してお渡しすることでお伝えしやすくなるかと思いました。「役人っぽい」しきたりでも、便利で使えるものがあったら民間でも使ってもいいではないか、という思いもありました。「霞が関」では、名刺に赤字で「就任御挨拶」と記すのは、自分の名刺を部下に委ねて「就任御挨拶」という赤スタンプを押す形でする場合が多いのですが、大学には「上司」、「部下」はありません。教授になったからといって管理職になったわけではありません。教授は准教授の「上司」ではありません。私は、赤スタンプを押してくれる部下は当然おらず、自分で押すのも何なので、印刷代を追加して払って印刷屋に赤字で刷り込んでもらいました。
 4月1日は、当学部では毎年恒例の入ゼミ選考試験が行われます。私のゼミに入りたい新3年生が私が課す試験を受けて、ゼミに入ることを許す学生を選抜するのです。入ゼミ試験が朝10時からあり、また試験の合格発表が終わるとその晩に新歓コンパをすることも予定されているのですが、やはり読書委員会の後はこれが欠かせませんね。読書委員になってからお酒が強くなったのか?!


 

2009年4月19日

 この日は、日曜日。もちろん、読売新聞読書委員会はあるはずがありません。そう、この日は、(後から振り返れば)この5月からの当大学の塾長が清家篤先生に事実上決まった日といえます。清家先生は、私の前任の読売新聞読書委員です(厳密に言うと前任とか後任とかという関係はないのですが、私が読書委員にさせて頂く契機を作って頂いた経緯があります)。私の任期が始まる直前の2007年12月まで、読書委員をされておられました。そういった経緯があるので、書評とは関係がありませんが、ここで書かせて頂いてもいいでしょう。
 これまで8年間に渡り塾長を務められた安西祐一郎塾長(当時)には、私としても少なからず思い入れがあります。2007年に拙著『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社刊)に関連して、義塾賞を頂戴したときに、義塾賞の表彰を安西塾長から手渡しで頂きました。これまで、政府の重要な会議の委員を務められるなど、塾長として慶應義塾大学の地位を対外的に高められた功績は大きいと思います。塾長として2008年に創立150年を迎え、慶應義塾創立150年記念式典を挙行されたことには敬意を表するところです。ただ、三田キャンパスにある慶應義塾大学の起源となる学部の者から見ると、三田キャンパスの学部には創立150年の恩恵が早期にあまり行き届かなかったのかなという印象を持っています。一例として、ようやく改築されることになりましたが、三田キャンパスの正門正面の南校舎は、創立100周年の際に建てられたものでありながら、創立150年が終わった後の今年になって取り壊す(完成は2年後)ということ(つまり、築50年!耐震強度が心配!だった)一方で、日吉キャンパスでは新しい校舎が建てられ、理工学部系の新たな大学院が設けられる、といったアンバランスがあったのは事実でしょう。
 この日に行われた塾長選挙の予備選挙では、当経済学部出身で商学部長であられる清家先生は、三田キャンパスの学部の方々を中心に支持を集めました。予備選挙の前に、各学部で、2名推挙する次期塾長候補者として、清家先生はご所属の商学部だけでなく経済学部からも推挙されていました。こうしたこともあって、予備選挙で最終的に選ぶことになっている正式な次期塾長候補者3名は、すべて三田キャンパスの学部の教授となり、安西塾長(当時)の3選はこの時点でなくなりました。
 そして、4月23日の評議員会で、清家先生が正式に次期塾長に選出されました。


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2009年7月1日

 『三田評論』2009年7月号には、「新塾長対談 『実学の精神』を継承して」と題して、本年5月28日から当大学塾長に就任された清家篤先生と、塾員で読売新聞読書委員の橋本五郎さん(読売新聞特別編集委員)との対談が掲載されました。その対談では、慶應の伝統と今後についてだけでなく、お2人が読売新聞読書委員としてもお付き合いがあったことから、読書委員会にも話が及んでいました。清家先生はお酒を飲まれない、との話の流れで、清家先生が「読書委員会の後のお楽しみは、私はいつもジュースでお付き合いして皆さんの話を聞いて楽しんでいましたよ。」と、今まで公に明かされていなかった読書委員時代の逸話に触れられました。清家先生も「2次会の店」や「3次会の店」にいらしておられたのですね。
 橋本さんが、引き続いて、「読書委員会の最大の存在理由というのは、異文化の交流と、極めて民主的に運営されているという二つの点」と、『三田評論』でありながら読売新聞でもなかなか触れられない読書委員会の核心に言及されました。橋本さんは、委員会の場などでいつもそう仰っていますし、私もこれは全く同感です。さらに、読書委員会について、「これはある意味では大学の縮図」という指摘は、言い得て妙だと思いました。確かに、読書委員に大学教授が多いことは影響しているとはいえ、新刊本について、書評に採択するか否かをそれぞれのご専門の立場から是々非々で議論しているのですから、言論の自由、学問の自由が保障されている大学と似た雰囲気が、読書委員会にはあると思います。
 今回の『三田評論』 2009年7月号の対談企画は、読売新聞読書委員会とは無関係なものであるとはいえ、読書委員会の一端を伝える貴重な記録として残される文献になると思います。



2009年7月7日

 この日は七夕です。読売新聞読書委員会が終わった後、いつものように「3次会の店」に行きました。ただ、4月以降、かつて「2次会」で使っていたお店が改築のため閉店となってしまったため、読書委員会が終わってから直接「3次会の店」に行っています。ということは、これを「3次会の店」というのは定義矛盾なので、これ以降「2次会の店」と呼ぶことにしましょう。
 このお店には、粋なことに七夕にちなんで笹がおいてあり、来店者にそれぞれ短冊に願いを書いてもらっていました。女将が皆に短冊を渡して書くよう促していました。そこで私は短冊に願いを込めて、「財政健全化」と書き、帰り際に笹にくくりました。これは真面目な願いです。今生きる日本国民にとっても、将来の日本国民にとっても、我が国の財政が早く健全化するよう願ってやまないのです。


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2009年8月9日

 今年も経済論壇では、日経・経済図書文化賞サントリー学芸賞等の賞レースも佳境に入って参りました。私は、昨年と同様に、どの賞の審査委員も務めておらず、受賞対象となる本を2009年度は刊行しておらず、既に賞を頂いているということもあるので、受賞作品の大胆予想をしてみたました。
 昨年、その受賞作品予想をこのページに書いたところ、露骨には書けないとしても、趣旨を生かして書評をしてもらえないかと依頼を受け、今年は『週刊東洋経済』, 2009年8月15・22日合併号に、「最新ベスト経済書 財政・公共経済で豊作 政策形成に資する良書5冊」として予想を公に書かせて頂きました。私が思うに、財政・公共経済の分野では、今年度は例年よりも良書が多く出されたと思います。その中でも、強いて選りすぐって私が挙げた5冊は、小西秀樹著『公共選択の経済分析』、吉田あつし著『日本の医療の何が問題か』、橋本恭之著『日本財政の応用一般均衡分析』、鎮目雅人著『世界恐慌と経済政策』、井堀利宏著『誰から取り、誰に与えるか』です。詳細は拙評本文をご覧頂ければと存じますが、前4冊は、日経・経済図書文化賞サントリー学芸賞を受賞していない著者による経済書です。日経・経済図書文化賞を既に受賞されている井堀先生のご著書は、読売・吉野作造章など広く一般書として認められた賞が与えられてしかるべき書だと私は確信しています。
 この週刊東洋経済での拙評では取り上げませんでしたが、財政・公共経済の分野では今年度は他にも良書がいくつか出たと思っています。例えば、上村敏之著『公的年金と財源の経済学』日本経済新聞出版社なども、今年度の良書に挙げられると思います。ただ、日経・経済図書文化賞では、昨年度に西沢和彦著『年金制度は誰のものか』が受賞しているだけに、2年続けて年金関連の書が受賞するかどうかは微妙なところかもしれませんね。



2009年8月16日

 この日の読売新聞読書欄は、2009年 読書委員が選ぶ「夏休みの1冊」として、毎夏恒例の夏休み企画が掲載されました。今回のお題は、新刊書に限らず、夏にピッタリの「アツい本」となっていました。「アツい本」といっても、熱い本、(夏を扱う)暑い本、(分)厚い本など、色々と考えられます。
 経済や政治に関する書で、「夏」に関わるものはあまり多くありません。私の分野柄、「夏」といわれると、城山三郎著『官僚たちの夏』とかを思い起こし、これを取り上げようかと思いましたが、今夏テレビドラマ化されているところで、今さらありがたみもない宣伝の片棒を担いでも仕方がないので、清水真人著『官邸主導』を選びました。私としては、今月30日の投開票が予定されている衆議院総選挙で「官僚主導」を変えることが話題となっているだけに、政治主導ないしは「官邸主導」をめぐるこれまでの熱い政権闘争を描いた書として、取り上げた次第です。
 また、この日の朝、フジテレビ系新報道2001で、今回の衆議院総選挙における政党のマニフェストに関連して、私がVTR出演しました。そこで、いくつかの点を言及したのですが、最終的に採用されたのは、民主党のマニフェストについて話した部分でした。
2009年度当初予算 歳出純計
クリックすると写真を拡大できます  民主党のマニフェストでは、(平成21年度当初予算の一般会計と特別会計の歳出純計である)207兆円を全面的に組み替え、2013年度までに約17兆円の財源を捻出するとしています。しかし、その歳出の内、約79兆円は国債費、約10兆円は削減しても国債(財投債)発行の純減にしかならない財政投融資の予算、約18兆円は法定され地方自治体が強く要求している地方交付税等です。これらは容易に削減や組み換えができるものではありません。すると、残り約100兆円です。それでいて、約69兆円が社会保障関係費です。もし、社会保障関係費をあまり削減できないとすると、残るは公共事業費や文教費等の約31兆円しかありません。こうした予算規模でありながら、どのように約17兆円の財源を捻出するのか、が今後問われるでしょう。そんな趣旨を述べました。
 これに対し、スタジオ出演していた民主党の岡田幹事長は、「土居さんの言ってることは間違っている」と名指しで指摘されました。約31兆円だけが財源捻出の対象ではない、社会保障費の中にも削減できるところがある、というわけです。
 言葉尻だけ捉えれば、私のコメントは否定されたように思われるでしょう。しかし、私は、この岡田幹事長の発言を、否定されたと思うどころか、むしろ「しめた」と思い心の中で歓迎しました。国債費や財政投融資など、そもそも削減できないものや削減しても財源にならないものを対象にするのは大間違いとしても、予算削減の対象を広げるほど政権運営には選択の余地が広がるわけですし、社会保障は大事だけれども無駄な部分もあるので、そこも切り込んで行くべきです。私のコメントの意図は、安直に予算編成をすると、社会保障費はほとんど削減できないと決め付けてしまいがちなので、聖域化しないようにすべきで、そうすれば歳出削減の余地も増えるだろう、ということを暗に誘導し含んでいたつもりです。そうした歳出削減に向けた意欲が、新たな政策決定過程でも生かされることを期待したいところです。
 今回の件では、あまりお気づきになられないかもしれませんが、学者と政治家とで議論の仕方が違うところも顕著に出たのではないかと思います。政治家は、主導権をいかに握るかがカギなので、その意見が真理に照らして正しいか否かは問わず、持論にいかにうまく政治的な支持を多く取り付けるかという観点で議論をしてくるでしょう。たとえ科学的に正しい主張があったとしても、自らの政治的立場を強化するように持論を展開し、時として対立する主張を政治的に否定しようとします。場合によっては、多数決的に持論が支持されていることを強調しようとします。
 しかし、学者は違います。学界での正論は、基本的には多数決で決まるものではありません。何が真理に近いかが重要であって、少数意見でも科学的に正しければそれでよいのです。別に、持論に多くの賛同者がなくても構わないという意気込みすらあります。その辺りが、学者と政治家の立場の違いというべきものでしょう。その違いを踏まえれば、より建設的な意見交換が出来ると思っています。


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2009年9月1日

 この日は、前回会合以降1ヶ月ほどの「夏休み」明け最初の読売新聞読書委員会でした。私は、その前日の8月31日まで、欧州に出張に出かけていました。出張からの帰国便に搭乗するロンドンのヒースロー空港に私がいたちょうどそのとき、日本時間8月30日深夜で、同日行われた衆議院総選挙の開票速報が報じられていました。ロンドンのヒースロー空港で帰国便に搭乗する直前まで、ネット上の開票速報を拝見しておりました。そういえば、2年前の夏の参議院選挙のときも、ニューヨークからの帰国便に乗る直前に、NHKの国際放送での開票速報の生放送をJFK空港で見ていて、大物議員が落選する様を見つつ、帰国便に乗り込んだのを思い出しました…
 与党の敗北を伝える選挙結果を見て、予想されていたとはいえ、2年前の夏の参議院選挙のときと同じような衝撃を受けました。リアルタイムで流れていたBBCニュースでは、速報として5分間に渡り、日本の衆議院選挙結果を報じました。東京と生中継して、民主党が300議席を超えて政権交代が起こることを報じました。BBCもさすがに日本のことを忘れていないということで安心しました。
 成田空港に向けて出発した帰国便は、折から台風が東京に接近中で、無事定刻通りに成田空港に着陸できるか微妙な状況でした。到着を案じてばかりしていても仕方ありません。30日は日曜日なので、2009年3月16日の欄でも触れた如く、機内で各紙の書評欄を読み比べしました。ちなみに、その日は、読売新聞社教育取材班著『大学の実力』の拙評も掲載されました。
 飛行機は次第に成田空港に近づいてゆきました。よりもよって、30日に民主党が大勝した翌31日に台風が首都東京を直撃して暴風雨になるなんて、天気が政権交代後の先行きを暗示するようなことにならなければよいのに、と思いました。現に、31日は、成田空港行でありながら台風を回避するため中部空港に着陸したままそこで運行打ち切りとなった便や、成田空港を夜に出発予定の便で早々に欠航を決めた便もあったようです。私は、到着する31日は特に予定はなかったのですが、9月1日には重要な会議と読売新聞読書委員会がありますから、それまでに東京に戻れるように着いてもらわないと、という気持ちでした。過去には、台風の影響を受けて、北京から成田空港に帰国する便に搭乗した際、最短ルートでは飛べず、一旦南下して上海上空を経由して4時間遅れで成田空港に到着したという経験があります(上海上空では窓から上海の中心市街地がきれいに鳥瞰できたのは良い思い出です)。仮に遅延したり他の空港に回避したりして到着までに時間がかかっても対応できるように、機内持ち込みの書類を多めにし、後は機内でワインなどを「ごっくん」して楽しもうか、と割り切りました。
 幸い、私が搭乗した便は、台風の影響を受けた悪天候の中かいくぐってほぼ定刻通りに成田空港に着陸しました。台風の影響が心配されていただけに、キャプテンの操縦に感謝ですね。
 私は、翌2日に再び欧州へ出張すべく成田空港から出発するので、東京には46時間ほどの滞在です。9月1日の予定を無事こなし、17時過ぎに読売新聞本社に到着し、読書委員会に出席しました。前日に帰国し、翌日に再び出国する(まるで「タッチ・アンド・ゴー」)ということで、読書委員会で会う人に「読書委員会のために帰ってきたのですよ!」と意気込みのほどを伝えました。何せ、このページでも既に2009年2月17日の読書委員会2009年3月17日の読書委員会のところで触れたように、委員会の前日や前々日に海外出張から帰国するということがあったりしていますしね。意気込みはウソではありませんが、読書委員会「だけ」のために帰ってきたわけではありません。
 翌朝には飛行機に乗る予定になっていましたが、読書委員会終了後、(私としては当然の如く)「2次会の店」に行きました。30日(日本時間の31日未明)まで欧州にいたので、私の体内時計は欧州時間になじんでいて、日本時間での夜遅い時間帯にはばっちり対応できました(翌日からまた欧州なので、体内時計を日本時間に合わせる気は皆無)。通常、私は飛行機の中では、最初の機内食が出されるときにお酒もそれなりに頂戴して、眠気を促して、その食後に寝る、という形で、時差ぼけにならないよう調整することにしています。そのためには、離陸後ほどなく出される機内食に合わせてお酒を幾分飲めるだけの体調(血中アルコール度というべきか)にしておかなければなりません。ということは、出国前日の夜はお酒を飲まないようにするのが基本となります。
 しかし、このページでも既に2008年7月22日の読書委員会のところでも触れたように、出国前日であれ読書委員会の後にはお酒を飲みに行っているので、今回もやはりそうしてしまいました。2009年7月1日の欄でも触れたように、読書委員会の後で皆でする話もやめられないことなのです。この日は、衆議院総選挙直後ですから、やはり橋本五郎さん(読売新聞特別編集委員)の政界談義で盛り上がりました。
 そして翌日、私はロンドンのヒースロー空港に、70時間ぶりにまた戻っていたのでした。ということで、今回は読書委員会がらみの話ではありましたが、書評の話とは全然関係ありませんでした…



2009年9月19日

 この日発売された『週刊東洋経済』2009年9月26日特大号に、「経済・政治・ビジネス書ベスト50」が掲載されました。2009年上期に刊行された本のうち、有識者の投票で決めるランキングの発表です。私もその評者の1人として加わって、よかったと思う本を順位をつけて3冊挙げて回答しました。今回は、ベスト政治書の推薦も加わりました。
 ちなみに、この『週刊東洋経済』2009年9月26日特大号の巻頭言「経済を見る眼」には、拙稿「鳩山新内閣−無駄削減の関門」が掲載されています。拙稿では、鳩山内閣が取り組もうとしている無駄な予算の削減は、第1関門の今年度第2次補正予算、第2関門の2010年度当初予算が待ち受けており、相当な努力が求められることを記しました。無駄遣いは、兆円単位の金額を探し出そうとすれば、目の前にころがっているというほど簡単に見つかるものではありません。「霞が関埋蔵金」も、打出の小槌のように振ればすぐに出てくるというほど簡単に出てくるものではありません。財源を捻出するということは、汗をかかなければ出来ないことなのです。
 さて、ベスト経済書の結果は、1位が吉川洋著『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』 2位がジョージ・A.アカロフ、ロバート・J.シラー著『アニマルスピリット』 3位が猪木武徳著『戦後世界経済史』でした。この3冊は、いずれも私が既に拙評を書かせて頂いたものです。拙評は、吉川洋著『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』は4月26日(日)に、ジョージ・A.アカロフ、ロバート・J.シラー著『アニマルスピリット』は7月5日(日)に、読売新聞読書欄で書かせて頂きましたし、猪木武徳著『戦後世界経済史』の拙評は、『中央公論』 2009年8月号の書評欄に掲載させて頂きました。これらは、既に拙評で述べているようにとてもよい本だと思います。ただ、私が今回敢えて推薦した書としては、10位に井堀利宏著『誰から取り、誰に与えるか』、17位に井伊雅子編著『アジアの医療保障制度』がランクインしていました。井堀先生のご著書は、これを単独で新聞・雑誌にて弟子である私が表立って書評するのは、身びいきというきらいがあるので、なかなかできないのですが、こうした複数の書を推薦する場でならお許し頂けると思っています。政権交代で鳩山内閣が成立した今の時期だからこそ、こうした筋の通った財政の書を皆様にご一読頂きたいと心から願っています。一橋大学の井伊教授のご著書は、各国の制度に精通した筆者たちが書いた各章の論稿を読み比べることで、アジアの医療保障制度の国際比較が出来るという点で、意義ある貢献をしていると思います。
 政治書についても推薦したのですが、私が推薦した書はランクインしませんでした。私が推薦したのは、待鳥聡史著『代表と統治のアメリカ政治』です。行政府と立法府で支配する政党が異なる状況「分割政府(divided government)」が起こりうるアメリカ政治の背景を的確に捉えている書です。東京都議会議員選挙の結果、都知事に対して異を唱える政党が第一党となったり、日本政治への示唆など時宜を得て興味深い内容でよい本だと思います。ちなみに、著者の京都大学の待鳥教授とは、2001年からカリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)国際関係・環太平洋地域研究大学院(IRPS)で、客員研究員として研究室が同じ(いわばルームメート)という関係でした。その頃の話は、拙サイトの「ラホーヤの浜辺から」に書き残しています。これまた、身びいきと思われないよう、この本を単独で拙評を新聞・雑誌に掲載するわけにはいかないので、この機会に推薦しました。著者が私と親しい方がよい本を出されると、とても喜ばしい半面、公の場で拙評で露骨に褒めては馴れ合いと見られるきらいがあるので、難しいところですね。


これまでの拙評

2009年
 9月20日(日):岩見隆夫著『演説力』
 9月 6日(日):エルヘイナン・ヘルプマン著『経済成長のミステリー』
 8月30日(日):読売新聞社教育取材班著『大学の実力』
 8月16日(日):清水真人著『官邸主導』
 8月 9日(日):マイケル・E. ポーター 、エリザベス・オルムステッド・テイスバーグ著『医療戦略の本質』
 7月19日(日):マイケル・J.ブラッドリー著『数学を生んだ父母たち』
 7月 5日(日):ジョージ・A.アカロフ、ロバート・J.シラー著『アニマルスピリット』
 6月21日(日):ジェフリー・K.ライカー、マイケル・ホセウス著『トヨタ経営大全2 企業文化(上、下)』
 5月31日(日):山同敦子著『こどものためのお酒入門』
 5月24日(日):産業経済新聞社編『橋下徹研究』
 5月 3日(日):吉田あつし著『日本の医療のなにが問題か』
 4月26日(日):吉川洋著『いまこそ、ケインズとシュンペーターに学べ』
 4月12日(日):ロジャー・ローウェンスタイン著『なぜGMは転落したのか』
 3月29日(日):小川一夫著『「失われた10年」の真実』
 3月15日(日):レオナルド・L.ベリー、ケント・D.セルトマン著『すべてのサービスは患者のために』
 2月22日(日):苅谷剛彦著『学力と階層』
 2月 1日(日):アミティ・シュレーズ著『アメリカ大恐慌(上、下)』
 1月25日(日):ティム・ハーフォード著『人は意外に合理的』、ダン・アリエリー著『予想どおりに不合理』
 1月11日(日):中谷巌著『資本主義はなぜ自壊したのか』


2008年
12月21日(日):読売新聞社医療情報部編『数字でみるニッポンの医療』
12月14日(日):森信茂樹著『給付つき税額控除』
11月30日(日):曽我誉旨生著『時刻表世界史』
11月24日(日):市村浩一郎著『日本のNPOはなぜ不幸なのか?』
11月16日(日):森剛志・小林淑恵著『日本のお金持ち妻研究』
11月 2日(日):渡辺努・植杉威一郎編著『検証中小企業金融』
10月19日(日):アラン・B.クルーガー著『テロの経済学』
10月12日(日):ダリアン・リーダー、デイヴィッド・コーフィールド著『本当のところ、なぜ人は病気になるのか?』
10月 5日(日):ニーナ・ラティンジャー、グレゴリー・ディカム著『コーヒー学のすすめ』
 9月21日(日):チャールズ・R.モリス著『なぜ、アメリカ経済は崩壊に向かうのか』
 9月14日(日):リチャード・ビトナー著『サブプライムを売った男の告白』
 9月 7日(日):小松成美著『トップアスリート』
 8月31日(日):ポール・R.クルーグマン著『格差はつくられた』
 8月17日(日):ビル・エモット著『アジア三国志』
 7月20日(日):R.M.ブックステーバー著『市場リスク 暴落は必然か』
 6月22日(日):村山治著『市場検察』
 6月15日(日):与謝野馨著『堂々たる政治』・中川秀直著『官僚国家の崩壊』
 6月 1日(日):上久保敏著『下村治』
 5月25日(日):ANA総合研究所編著『航空産業入門』
 5月19日(日):須田将啓・田中禎人著『謎の会社、世界を変える。』
 4月20日(日):白川方明著『現代の金融政策』
 4月 6日(日):阿部彩・国枝繁樹・鈴木亘・林正義著『生活保護の経済分析』
 3月23日(日):ラニー・エーベンシュタイン著『最強の経済学者ミルトン・フリードマン』
 3月16日(日):砂川伸幸・川北英隆・杉浦秀徳著『日本企業のコーポレートファイナンス』
 3月 9日(日):石弘光著『税制改革の渦中にあって』
 2月24日(日):進士友貞著『国鉄最後のダイヤ改正』
 2月17日(日):大竹文雄編『こんなに使える経済学』
 2月10日(日):富田俊基著『財投改革の虚と実』
 1月28日(日):ティロール著『国際通貨危機の経済学』
 1月20日(日):日本経済新聞社編『イギリス経済再生の真実』


読売新聞読書委員(2009年4月現在:敬称略・五十音順)
 池内了(宇宙物理学者、総合研究大学院大学理事)
 井上荒野(作家)
 井上寿一(日本近現代史家、学習院大学教授)
 岩間陽子(国際政治学者、政策研究大学院大学准教授)
 小倉紀蔵(韓国思想研究家、京都大学准教授)
 小野正嗣(作家、明治学院大学専任講師)
 春日武彦(精神科医、東京未来大学教授)
 片山杜秀(音楽評論家・日本思想史研究者、慶応義塾大学准教授)
 北上次郎(文芸評論家)
 黒岩比佐子(ノンフィクション作家)
 小泉今日子(女優)
 田中純(思想史家、東京大学准教授)
 土居丈朗(経済学者、慶応義塾大学教授)
 福岡伸一(分子生物学者、青山学院大学教授)
 本郷和人(日本中世史家、東京大学准教授)
 松山巖(評論家・作家)
 本村凌二(西洋史家、東京大学教授)
 渡辺靖(文化人類学者、慶応義塾大学教授)
 綿矢りさ(作家)
 ………………………………………
 榧野信治 読売新聞社論説副委員長
 橋本五郎 読売新聞社特別編集委員



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