・ 研究実績の概要
(1)既にほぼ完成していた"Accountable Voting"論文について:メインの不可能性定理の1つを拡張し、望ましい投票ルールの存在条件の特徴付けを新たに1つ追加できた。これはトップジャーナルを狙う上で大きな進展である。当初はNo-Power-Game property(以下、NPGとする) とA-Unanimity が整合しないという不可能性定理であったものを、NPGをパラメター付けしたところ、NPGの最も弱い形以外はA-Unanimity と整合せず、最も弱い形のNPG(1)は整合する、という必要十分条件が見つかった。 この"Accountable Voting"論文の学会報告と学術雑誌投稿にも力を入れた。海外の学会では4回、国内の学会で1回報告し、また国内のセミナーでも2回報告した。
(2)投票ルールの特徴付け:本課題で予定していた第1論文にもとりかかり、"Accountable Voting"論文の投票ルールをより一般的な定義域に拡張した上で、スコアリング投票ルールについての公理的特徴付けを探っている。既にスコアリングルールの1つである単記投票ルールについては、利害関係バイアスを減らす公理を含めて公理的特徴付けに成功した。
(3)ゲームモデル:グレーヴァが研究してきたプレイヤーが移動するゲームモデルを基礎として、社会的ランキングと個人の選好によりプレイヤーが移動する(例えば学校選択)ゲームモデルを考え、社会的評価ランキングがプレイヤーの利得に影響するのみならず、プレイヤーの移動の結果が社会的評価ランキングを変化させるというモデルを作ろうとしている。本年度は非常に簡単なケースに着手した。