研究者は訴える。
私たち研究者は
対イラク戦争と日本の加担に
再び反対します。
2003年3月19日
私たちは,社会科学および人文科学研究者に呼びかけ,1530人余の賛同のもとに「米国の対イラク先制攻撃」と「日本のイラク攻撃加担」に反対する「意見広告」を,「朝日新聞」(2月27日,全国版),「毎日新聞」(3月4日,関東版)に掲載しました。
イラク攻撃反対の声は大きなうねりとなって世界中に広がり,国連安保理でも国連全体でも,平和的解決の努力を求める意見が,武力行使容認決議を求める意見を圧倒していました。
しかし残念なことに,米国等はこれら国際世論の動向に逆らって,17日,国連決議なしの対イラク先制攻撃突入の意向を示し,同日米国大統領がイラク政府に対して武力攻撃に向けた最後通告を突きつけました。
この事態に対し私たちは,先の「意見広告」の呼びかけ人として次のように声明し,多くの人々に賛同いただくよう呼びかけます。
(1) 私たちは,米英両国に,イラクに対する軍事行動を即時停止し,国連での協議に復帰するよう要求します。
今回の米英軍の攻撃はいかなる面からみても国際法と国連憲章に違反しています。米国は大量破壊兵器による脅威を除去するための自衛権発動としての先制攻撃だと主張していますが,現在イラクが差し迫った脅威を与える存在であるとは認められず,このような主張は国際的合意を得られるものではありません。
3月7日「国連イラク査察団」ブリックス報告は,不充分ではあるが査察が進んでおり,査察には数ヵ月を要するとしています。イラクになお大量破壊兵器が残っているとしても,査察による平和的手段でその廃棄をねばり強く実行させていくべきです。
また米国は途中から,武力行使の目的にフセイン政権打倒を入れてきましたが,政権転覆のための対外武力行使は明らかに「国連憲章」2条4項に違反するものです。もちろん,私たちはフセイン政権を擁護するものではありません。抑圧的独裁政権を真に打倒するのはその国の民衆による批判・抵抗であるべきだと考えています。
米国は,米・英・スペインの武力行使容認決議案の支持を得るために奔走しましたが,安保理での多数の賛同が得られないとなるや,17日決議案を撤回し,昨年11月の安保理決議1441によって武力攻撃が可能であると主張しました。しかしこれもまた無理な主張です。
決議1441は,特定の国が,「国連イラク査察団」の報告と安保理の判断とは別個に,大量破壊兵器の存在を断定しこれを根拠に武力行使を行うことを許すものではありません。
もしこの米国の不法かつ身勝手な攻撃が正当化されるならば,これまで築き上げられてきた国際法秩序は根底から崩れさり,世界はつねに先制攻撃や政権転覆戦争の危機をはらむ無法地帯と化します。
また,かかる軍事行動を国連が追認するならば,国連の機能は麻痺し,それが今まで曲がりなりにも国際平和に果たしてきた役割は終止符を打たれてしまいます。私たちは国連に対し,米国の独善的軍事行動に屈することなく,国際平和維持機構としてのその目的と原則に照らして毅然たる態度をとることを要請します。
(2) 私たちは,非人道的な戦争に抗議し,大量殺傷・破壊兵器,核兵器の使用禁止を要求します。
米国のイラク攻撃では,アフガン攻撃時よりもさらにいっそう超大型の殺戮・破壊兵器が使用されようとしています。大量破壊兵器を廃棄させるという戦争が,超大型殺戮・破壊兵器によって遂行されるということは,この戦争がきわめて非人道的なものであり,もはやその正当性を持ち得ないことを世界に示すものです。
この戦争は,恐るべき規模で民間人の殺傷,飢餓,自然環境の破壊を生み出し,世界中に憎しみとテロを蔓延させてしまいます。
私たちは,国連が非人道的兵器の使用と非人道的行為を検証・告発するよう要請します。
いま,全世界的な規模で軍事力行使に反対する行動が日に日に盛り上がっていますが,これはなによりもこの戦争がもたらすはかりしれない生命の損傷,生活諸条件の破壊等への恐怖と怒りに由来するものです。私たちは,平和を求めるこれら世界の人々とともにありたいと考えます。
(3) 私たちは日本政府に対し,米英の武力行使支持の態度に強く抗議し,戦争に加担するあらゆる行動を即時停止するよう要求します。
日本政府はこれまで,平和的解決を求める日本と世界中の人々の願いを無視して,武力行使を容認する米・英・スペイン決議案を支持し,安保理諸国にその賛同を訴え続け,この決議案が撤回され,米国大統領の対イラク攻撃強行の演説が行われるとただちに,米国の主張に全面的に追随して,国連決議なしの武力行使支持を正式に表明しました。
日本政府が以上のような米英の武力行使へ加担することは,「国際紛争を解決する手段」としての戦争の放棄を宣言している日本国憲法に違反するものであると同時に,国連を尊重するという戦後一貫した日本外交の原則を破るものであります。
しかも政府は,米国等の決議案支持,国連決議なしの米国の武力行使支持を,国会での正式な討論も議決も行わないまま進めてきましたが,このことは,議会制民主主義の原則に反するものといわねばなりません。
私たちは,日本政府に対し,戦争に加担するあらゆる行動を即時停止し,戦争関連費用分担のために貴重な財政資金を用いないよう,強く要求します。
*この声明の発表と声明への賛同は,各個人の意思と責任で行なうものであり,呼びかけ人・賛同者それぞれの所属機関・団体等を代表して行なうものではありません。
「お礼とご報告」にありますように,「意見広告 2.27」と「声明 3.19」の発表を中心とする今回の呼びかけ人の活動は終わりました。
このウェブ・サイトについては,資料・分析編の作成などを予定しており,また事態の推移によっては新たな活動を行なう場として存続いたします。
- ただし,当面の役割は終わりましたので,
- 1. メールによる賛同者の受付は終了いたしました。多数のご賛同ありがとうございました。
2. 掲示板は,過去の投稿の閲覧のみ可能とし,新たな投稿や返信機能は停止いたしました。