ここでは、この回での内容に関連する正誤訂正をお伝えします。
だから必ずしも図6のように :誤
だから必ずしも図7のように :正
『経済セミナー』2001年8月号では、紙幅の都合で言及できなかった国庫支出金の詳細について、ここで紹介したい。
国庫支出金の非効率性
地方税制がより分権的となり地方政府に課税自主権があっても、中央政府が政府間補助金として特定定率補助金を分配することは、(租税価格が歪んで)代替効果が生じて非効率的であることが知られている。わが国の国庫支出金は、国から地方政府に対して使途を予め定めて支出される補助金である。いま、地方政府iがGi単位だけ地方公共財を供給するなら、限界変形率がPならそのために私的財がPGi単位だけ必要で、これに対してm(×100%)だけ補助する形で国庫支出金(特定定率補助金)を分配するとしよう。その財源は、国税として全地域で住民1人当たり同額のtだけ課税した一括固定税とする。地方政府は、地方税として一括固定税を全地域で住民1人当たりtNiだけ自由に課税できるとする。このとき、地域iの代表的家計の予算制約式は
xi=Fi(ni, Li)/ni−tNi−t
となる。地方政府の予算制約式(地方交付税は簡単化のため捨象)は
PGi=tNini+mPGi
となる。また、上2式より、特定定率補助金分配後の地域iの統合された予算制約式は、
xi=Fi(ni, Li)/ni−(1−m)PGi/ni−t
となる。
連載本文の図5(『経済セミナー』2001年8月号113頁)と同様、国庫支出金分配前(m=0)の予算制約式は図A5−1の直線GG'で、効用最大化点は点Eiである。国庫支出金分配後の予算制約式(傾き(1−m)P/ni)は図A5−1の直線LG'となり、効用最大化点は点Eimとなる。ここでの定率補助金の分配額は線分QEim相当分である。定率補助金によって予算制約式の傾き(私的財と地方公共財の価格比)が変化して、代替効果が生じるから、連載第4回と同様、超過負担が生じて効率性の観点から望ましくない。
図A5−1
さらに、線分QEim相当分と同額の一般定額補助金を交付したときを考える。線分QEim相当分と同額の一般定額補助金を交付したあとの予算制約式は、図A5−1のL'L"となる。このときの効用最大化点は、点EiQとなり、この効用水準は通常点Eimの効用水準よりも高くなる。このように、同額の政府間補助金を分配するとき、一般定額補助金の方が定率補助金よりも高い効用水準が得られる。その理由は、一般定額補助金は地方歳出(地方公共財供給量)に依存しない形で分配され、租税価格が変化せず代替効果が生じないためである。このことから、わが国における地方分権に際して、効率性の観点から、地方公共財の便益がスピルオーバーしないならば、特定定率補助金である国庫支出金を廃止(その支出の財源になる国税を地方財政に税源移譲して地方税にするか、国直轄の公共財供給のための支出に替えるか)することが望ましい。注A1
脚注
A1) 地方公共財の便益が地域を越えてスピルオーバーする場合は、その限りではない。なぜならば、特定定率補助金によってスピルオーバーに伴う外部性(非効率性)を解消することができるからである。
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