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(※注 以下、順位、タイトル、ニュース記事、解説の順で並んでいます)
第1位
サラリーマンが農協職員の年金の尻拭い
政府は16日午前の閣議で、現在5つに分かれているサラリーマンの公的年金制度の一元化について、農協職員らの農林漁業団体職員共済組合(農林年金)を民間サラリーマンの厚生年金に統合する法案をまとめた。今国会に提出し、来年4月から施行する予定。
(朝日新聞/3月16日夕刊)
 
 農協職員らの年金積立金を扱う農林年金の財政が悪化の一途をたどっている。その理由は農業の衰退と、サラリーマンよりも手厚い年金給付が背景にある。この財政悪化を、民間サラリーマンの年金積立金を扱う厚生年金と統合して、サラリーマンがコツコツ貯めた年金積立金を使って解決しようとしている。いわば、サラリーマンの財布に農林年金が手を突っ込んで、つかんだお金で農協職員に年金を給付することが事実上決まったのである。
 厚生年金側も、指をくわえて見ていたわけではなく、統合するには農林年金側が2兆円を負担せよと主張したが、結局1兆7600億円に値切られてしまった。その差額が、まさにサラリーマンの財布に手を突っ込んで、抜かれてしまったお金なのだ。当然、民間サラリーマンがもらえる年金は、その分だけ減らされる羽目になる。
 こうした統合が、民間サラリーマンにほとんどまともな相談もなく決まったこと自体、昨今の年金不信をさらにあおることになりかねない。サラリーマンの皆さん、二度とこんなことを許さないよう、自分の大切な虎の子の年金積立金の行方には、くれぐれも目を離さないように注意していてください。
 
第2位
なぜ農家には手厚いのか
政府・自民党は、農業経営に意欲のある農家を対象に収入か所得を一定程度、税金で補填する「経営所得安定対策」の検討を始めた。農作物の価格下落が続き、農家経営が厳しさを増していることに対する施策だが、国民的合意を得て透明性のある仕組みにするには、価格低下の理由を突き止めることが先決。
(日本経済新聞/3月10日朝刊)
 
 またぞろ農業の話だが、要するに今の政府・自民党はサラリーマンには冷たく、農業従事者には手厚いということを、改めて肝に命ずる必要があるという話である。
 デフレ状態にある経済で、農家だけでなく一般の民間企業でも商品の価格下落で経営が厳しくなっている。にもかかわらず、農家には収入が減ったらその分をサラリーマンが納めた税金で穴埋めしてあげるという政策である。一般の民間企業にはそんな政策は全く検討すらされていない。都市で一生懸命働いたサラリーマンが納めた税金が、安易に農家の収入の穴埋めに使われることは問題である。
 国民がこの問題に関して考えなければならないことは、どこまで農業を保護すべきかということである。食糧自給率が低い日本では、ある程度国内で食糧を生産できるようにする必要があるという意見がある。その半面、日本の農業はコストが高く、これを保護するには国民に高い価格の食糧を買ってもらい、農家に補助金を与えなければならない。我々は、この機会に食糧安保のメリットとデメリットをよく考える必要がある。
 
第3位
農林水産省に告ぐ、「自業自得だ」
九州・有明海の養殖ノリ不作の一因とされる長崎県の国営諫早湾干拓事業の継続を求めて、諫早市など地元一市八町の市町長ら約130人が9日、東京都内で谷津農相らに陳情した。農水省は干拓地の調整池内の水質調査のため、工事の一時中断を表明したが、その後、事業を推進する地元が反発。金子原二郎・長崎県知事ら同県関係者が連日のように陳情を重ねている。
(読売新聞/3月10日朝刊)
 
 サラリーマンに不利益を与えながら、手厚く守ってきた日本の農林水産業は、ついに内部分裂を露呈した。農林水産省は、消費者に高い値段の米を買わせておいて、農家を守るために米の輸入制限をして、手厚く補助金を与え続けた。さらに、多額の税金をつぎ込んで諫早湾干拓事業にまで手を出した。農林水産省は、漁業に対しても同様に手厚い保護を与え続けていた。
 ところが、農家と同じ農林水産省所管でありながら、漁業関係者が反旗を翻した。そのうえ、これに対する反論も飛び出した。農林水産省は、いったい誰の利益を守ろうとしているのか。農家か、漁師か、はたまた干拓事業にたずさわる土建業者か。それを不明確にしたところに、農水省自身の失敗がある。守るべきは国民全体の利益である。農家、漁師、土建業者だけでなく、都市に住む納税者にとってもよりよい決着が望まれる。そのためには、水質調査だけでなく、この事業の便益と費用(税負担)を改めて調査し直し、もし便益の割には税負担が重いならば、事業を中止する英断を期待したい。
 
第4位
去り行く首相にさえ処理を要請するほど深刻な不良債権
森喜朗首相とブッシュ米大統領は19日、ホワイトハウスで会談し、日米同時株安を受けた経済危機を回避するため両国が経済政策で協調していくことで合意、共同声明を発表した。大統領は日本の不良債権問題について「日本が全力で取り組んでいないとの見方が米国内にある」と懸念を示し、早期処理を強く要請。
(日本経済新聞/3月21日朝刊)
 
 史上稀に見るベタ記事扱いの日米首脳会談が行われた。辞める予定の首相相手の会談では、(日本ではトップ記事でも)アメリカのマスコミではベタ記事扱いだった。それでも、ブッシュ大統領をはじめとするアメリカ政府の認識は鋭く、日本が不良債権処理に躊躇してはならないと言及した。不良債権処理は、一刻も早く徹底的に行うべきである。
 たしかに、農家のみならず民間企業にも甘えがあり、収益が上がらない企業でもこれまでの付き合いで銀行からお金を貸してもらい、なんとか倒産せずに食いつないで来たという企業がある。こうした状況では、銀行の不良債権は処理した傍からまた増える、という具合で、かれこれ10年が過ぎようとしている。この先また10年、好景気を実感することなく憂鬱な経済状態を過ごすか、この1〜2年は企業の倒産、失業などの痛みを伴うことにはなるが、その後は新たな企業で新たな仕事を始めて好景気を満喫するか、この二者択一が今の日本国民に改めて突きつけられたのである。
 これまでの10年は前者を選択した。しかし、これからの10年は、この1〜2年は企業の倒産、失業などの痛みを伴ってでも後者を選択すべきである。今我々に必要なことは、さらに10年憂鬱な経済状態に耐えることではなく、この1〜2年だけ経済的苦痛に耐えることである。それは激痛であるかもしれないが、その後の好景気を満喫するために必要なことである、と覚悟を定めよう。
 
第5位
損をしても八つ当たりしてはいけません
渡辺裁判長は、「公団の分譲住宅の価格設定は市況の変動を十分に考慮できず、強気に設定した疑いがぬぐえない。機敏に対処するといった柔軟性にも欠けていたとのそしりを免れない」と公団側の対応に批判を加えつつも、「価格が市況の変動で左右されるのは資本主義経済では普遍の理。公団側の値下げ販売に伴う法的責任は問えない」として住民側の請求を全面的に退けた。
(産経新聞/3月23日朝刊)
 
 都市基盤整備公団が売れ残りの分譲マンションを値下げして販売したことに対して、値下げ前に購入した住民が公団を相手取り損害賠償を求めた東京地裁での裁判で、資本主義経済の本質をよく理解した判決が出された。
 住民の方には気の毒だが、値下げしたらその分の損失を穴埋めしてもらうという発想は、経済学者として同意できない。値下げ分を損害賠償するということは、株価や地価が値下がりして経営破綻した金融機関に対して無制限に公的資金を投入することと、経済的には同じことである。金融機関はダメでマンションの住民なら穴埋めはよいという経済学的理由はない。この世の価格は変動するものであり、その変動に伴い得をすることも損をすることもある。買ったものが値下がりして損をしてもそれは買った人の自己責任、としなければ、放漫経営をする人がはびこり、円滑な経済活動ができなくなる。だから、値下がり損をしたから損害賠償と言わないでほしい。損をしたのは、公団マンションの住民だけではない。地価が高騰したときに持ち家を買って、その後の地価下落で損をした経済学者もいるのだから……。
 
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