日本弱視教育研究会・会長挨拶

会長 柿澤 敏文

柿澤 敏文会長の顔写真

2016年8月22日更新


 日本弱視教育研究会は、弱視教育に関する科学的研究や実践的研究を志す者の連携協力によって我が国における弱視教育の進歩・発展を図ることを目的として、1964年4月に創設されました。2016年4月には設立53周年を迎え、半世紀を超えて活動を続けています。設立50周年目の2013年には「我が国における弱視教育の展開」(あずさ書店)と題する書籍を日本弱視教育研究会企画のもと刊行し、弱視教育の発展の歴史を公表しております。

 日本弱視教育研究会の主な事業は、研究会創設年の1964年から今日まで、会員の研究促進を目的とする弱視教育研究全国大会の開催と、研究成果の蓄積と公開を目的とする研究誌「弱視教育」の刊行です。第1回弱視教育研究全国大会は、弱視教育の発祥の地ともいえる大阪にて開催致しました。その後も全国各地で毎年大会が開催され、2016年1月には第57回大会を鹿児島県立鹿児島盲学校を主管校として鹿児島市にて開催し、200名に及ぶ参加者のもと、熱心な研究情報交流を行いました。来たる2017年1月19日(木)・20日(金)には群馬県立盲学校を主管校として第58回大会を前橋市にて開催する予定です。

 また、会員の研究業績や弱視教育に関する種々の情報を掲載する研究誌「弱視教育」は、当初、年1巻6号の刊行でしたが、1号当たりのページ数を増す対応に伴い、1986年より年1巻4号を刊行して今日に至っており、2016年には54巻、通算250号余に及ぶ刊行を数えています。研究誌「弱視教育」は、我が国を主体として諸外国をも含んだ弱視教育の進歩・発展の記録を綴る資料として、また、未来の弱視教育のあるべき方向性を探る研究資料として、唯一無二の存在であると言えます。

 このほか、研究会には会長、副会長とともに、全国盲学校長会ならびに各地の弱視教育研究会より選出された理事と、事務局担当理事、機関誌担当理事、東地区・西地区担当理事、研究担当理事、監事からなる理事会を設置し、時代とともに変化する弱視教育に関わる研究会としての運営指針の検討を推し進めております。

 本研究会は、視覚障害、特に弱視の方々の自立や社会参加に向けて、教育、心理、保育、医療、保健、福祉、労働などの基礎と実践の専門家を包含した研究団体です。2016年4月現在、501名の方々が正会員として本研究会に登録されており、日々の研究・実践の成果を会員間で共有するべく活動を行っております。近年、我が国におけるインクルーシブ教育やノーマライゼーションの理念の進展とともに、特別な教育・支援の対象となる幼児児童生徒等の障害の概念や範囲が拡がっており、その一方で障害の重度・重複化や多様化が進行しています。こうした中で、「弱視」の状態をもつ幼児児童生徒等はマイナーな存在で、多様な子供たちや人々の中に埋もれがちにあると言われています。特別支援教育を含むインクルーシブ教育システムにおいて、一人ひとりに丁寧に対応する教育が必要とされている今だからこそ、一人ひとりの状態が大きく異なる弱視の幼児児童生徒等に即した教育の在り方を研究・実践して提言する研究団体として、今までに増して広く情報共有・情報発信を行い、我が国の包摂的社会の発展に貢献してまいりたいと思います。

 このような活動を展開している本研究会に関心のある多くの方々のご入会・ご参加を、心より歓迎いたします。


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