授業科目名
情報処理II(fortran言語による統計データ処理 I)
情報処理III(fortran言語による統計データ処理 II)
担当教員
赤林 由雄
授業科目の内容

諸君が大学において研究を進めていくにあたって、さまざまな形の情報を処理していかなければならない。その際、強力なツールになるのはコンピュータであり、その処理の多くはワードプロセッサや表計算ソフト、統計処理パッケージなどのアプリケーションソフトで対処できるものである。しかしながらそこでできるのはあくまでお仕着せの処理であり、必ずしもかゆいところに手が届くような仕様になっているとは限らない。自分が本当にやりたいことをコンピュータにやらせるためには自分でプログラムを組む必要がある。そのためには何か一つ言語を習得しておくことが必須の条件である。

また自分でプログラムを組むことにより、コンピュータがさまざまな処理をどのようにおこなっているかの一端が理解できるようになる。これはけっして無駄なことではない。この経験はアプリケーション・ソフトを使用している際に発生するさまざまなトラブルに遭遇したときに生きてくる。計算機での一般的な処理がわかればある程度の対処の仕方がわかってくるのである。

私が担当する情報処理II・IIIでは、fortran言語を使ったプログラミングを扱う。

このfortranはコンピュータが実用化した当初からあるプログラミング言語であり、主に科学技術計算に使われている。計算機科学の専門家にはいつも時代遅れというレッテルを貼られ、まもなく廃れるであろうと言われ続けながらもしぶとく生き残ってきている言語である。それは大型コンピュータでもパーソナル・コンピュータでもそれほど使い勝手がかわらず、初心者にとっては理解が容易な言語だからというのがその理由の一つである。おそらく実際の処理に使える段階に到達する速度は他の言語よりもかなり早いのではなかろうか。

諸君はこの言語によるプログラミングを通じて、コンピュータで情報を処理するためにはどのような手順をふむべきかを修得してほしい。ここで一つの言語と処理の手順をものにできれば、他の言語での処理の修得はかなり楽なものになるだろう。

また経済学部の学生がよく使う計量分析用のパッケージTSPはもともとfortran言語で開発されたという経緯があり、fortran言語に近いコマンド体系をとっている。したがってfortranを学ぶことにより、TSPを違和感なく高いレベルで使えるようになるだろう。

春学期の情報処理IIではプログラミング言語fortranの基本的な文法と基本的なアルゴリズム(処理の手順)の修得を目的とする。これはあくまで基本である。この基本を前提として、秋学期の情報処理IIIでは諸君が経済学の研究を行っていくうえで実際に遭遇するであろうさまざまな事例を解決していくためのプログラミング技法の修得を目的とする。実際のデータを扱う場合、さまざまなデータの性質をふまえて処理をする必要がある。数値計算をするとき、統計処理をするとき、また大量のデータを効率的に処理しようとするとき、その場面に応じて必要となる技法がある。それらを具体例に即して覚えていき、この講義が終わったときには使えるプログラムを組めるようになることがこの講義の目標なのである。

教科書
浦 昭二編『FORTRAN77入門』(培風館)
参考書
授業の計画
春学期・情報処理II
  1. コンピュータでの情報の処理の概要
  2. プログラミング、コンパイル(1)
  3. プログラミング、コンパイル(2)
  4. 四則演算(1)
  5. 四則演算(2)
  6. 条件による処理の分岐と繰り返し(1)
  7. 条件による処理の分岐と繰り返し(2)
  8. 繰り返し・書式(1)
  9. 繰り返し・書式(2)
  10. 文字列処理
  11. 配列(1)
  12. 配列(2)
  13. 関数(1)
  14. 関数(2)
  15. 応用計算の方法
秋学期・情報処理III
  1. サブルーチン(1)
  2. サブルーチン(2)
  3. サブルーチン(3)
  4. 数値計算の精度(1)
  5. 数値計算の精度(2)
  6. 文字列処理の応用
  7. 統計処理の実際(度数分布表とヒストグラム(1))
  8. 統計処理の実際(度数分布表とヒストグラム(2))
  9. 統計処理の実際(度数分布表とヒストグラム(3))
  10. 統計処理の実際(回帰分析(1))
  11. 統計処理の実際(回帰分析(2))
  12. 統計処理の実際(回帰分析(3))
  13. 大量のデータ加工と処理(1)
  14. 大量のデータ加工と処理(2)
  15. 大量のデータ加工と処理(3)
担当者から履修者へのコメント

この情報処理IIと情報処理IIIは一応講義としては独立した扱いではあるが、講義の構成としては通して受講することを想定している。情報処理IIを受講しようと考えている諸君には情報処理IIIもあわせて受講することを勧めたい。通して受講することによってはじめて今後の研究に役立てることができるからである。また情報処理IIIだけを受講することも制度上は可能であるが、これはあまり勧めない。秋学期の最初にかなりきちっとしたプログラムが組める状態であることを前提として講義を進めるからである。もし情報処理IIIだけを履修する場合は、そのことを覚悟の上受講して欲しい。

この講義においては、出席してただ話をきいているだけではプログラミングの能力は身につかないだろう。自分でいろいろと頭を使って考え、さまざまなプログラムを自分で作ってみて、エラーの山を出しつつ、悩んでこそ初めてモノになるのである。そのような演習を課すので覚悟して受講して欲しい。

なおこの情報処理II・IIIでは、パーソナルコンピュータを使うにあたっての基本的な知識があることを前提として講義を進める。最低限、ワープロソフトなどで、テキストの編集の経験があることを前提とする。

講義中での演習はインフォメーション・テクノロジー・センターのWindows PCを利用する。そのため、ITCのアカウントを使えるようにしておく必要がある。またレポートの提出はkeio.jp教育支援システムを利用するので、keio.jpのアカウントを使えるようにしておく必要がある。

またこの情報処理II/IIIの扱うデータ処理は主に統計処理である。題材としては「統計学」で学ぶことを中心として扱うため、「統計学I」「統計学II」を並行して履修している必要がある。すなわち原級にとどまった1年生が、統計学を並行して履修することなしに、この科目を履修しても内容を理解することは難しい。統計学を履修していれば理解できるはずの内容を、履修していない者のためにあらためて説明することはしない。原級にとどまった1年生がこの講義を履修するのは無謀以外のなにものでもない。

成績評価方法

成績評価は、提出されたレポートに対する評価に基づいて行われる。