諸君が大学において研究を進めていくにあたっては、さまざまな形の情報を処理していかなければならない。たとえばさまざまな統計からデータを引っ張ってきたり、さまざまな情報を収集・検索したり、計算をしたり、グラフを描いたり、文献の整理をしたり、大量の文章を書いたり、編集したりする必要がでてくるだろう。しかし扱うべき情報が膨大な場合、できるだけ効率よくおこなっていかなければ、時間はいくらあってもたりなくなる。手と電卓と鉛筆と定規と紙のカードだけで対処しようとしたら日が暮れてしまう。コンピュータはそのような情報処理をおこなうための強力なツールの一つである。
経済学部における経済学・統計学・数学・専門科目などの講義においてもこれらのツールを活用することが求められることは言うまでもない。
また研究の過程において、ネットワークを通じたさまざまな形での情報の受発信をしなければならない局面が発生する。ここで諸君はネットワークを介して(極端に言えば)全世界と対峙することになるわけだが、さまざまな危険から我が身を守らなければならなくなることは覚悟しなければならない。と同時に自らが無意識のうちに加害者とならないように常に心がける必要もあるのである。
経済学部の情報処理科目は、今後、諸君が経済学部で研究や情報の受発信をするために必要となるようなさまざまな情報処理の知識を修得することを目的として設置されている。
その情報処理科目において、この「情報処理I」は、高校で「情報」科目を履修した程度の知識がある者を対象として、コンピュータを使った情報処理の第一歩、すなわちWindows搭載のパーソナル・コンピュータ上での文書処理(作成・編集・加工など)・データ処理(計算・グラフの作成など)・情報の受発信(Eメール・WWWなど)の方法を講義し、演習を行う予定である。また、それと同時に、ネットワーク社会の中で自らを守り、加害者にならないための基礎知識も身につけてもらうことになる。
と、ここまでは、この講義要綱は他の情報処理I(Windows入門)とほとんど変わらない。この講義が他の「情報処理I(Windows入門)」と違うのは、教え方(に対する考え方)である。
私の授業の目標、それは「短期間でバリバリ使えるようになる」ことである。もちろん他の授業でも「使える」ようになることを目指すことは言うまでもない。しかし本当に使えるようになるのは実はそう容易なことではない。この講義が行われるのはあくまで大学である。街のいわゆる「パソコンスクール」のようにインストラクターがマンツーマンでついて手取り足取り教えたりはしない。半期のたった15回しかない講義で諸君はさまざまなことを修得しなければならないのである。もちろんソフトのすべての機能について講義の時間内に触れるわけにはいかないのだ。
そのような制約の下で「使える」ようになるために、この授業ではどうするのか。もちろん授業中には概略を説明するだけである。あとは各自で参考書やソフトのヘルプなどを読みながら自分で考え、悩み、苦しみながら大量の演習を授業時間外にこなしてもらうことになる。また、そういうプロセスを経なければまともに使えるようにはならないというのが永年にわたる経験の示すところであり、それが私の信念でもある。くどいようだが、ここは大学であり、諸君は大学生である。教えてもらわなければわからないとか、習った範囲以外の演習はこなせない、というのではあまりにも情けない。示唆をうけたら自分で調べてやってみる。いろいろ自分なりに工夫してみる。これが使えるようになる唯一無二の道である(と私は信じている)。
過去数年にわたって私の授業は学生からはきびしいという評価を受けてきている。それは簡単にはできない課題が毎回のように出される(と学生は感じるらしい。実は3回に2回の割合なのだが)からである。しかし簡単に答えがでるようなものをやってみたところで「使える」ようにはならないし、つまらないだけである。自分の頭で考えぬき、試行錯誤を繰り返したうえでクリアできてこそおもしろいのではないか、と私は思う。そしてそれらの課題はあとあと必ず直面するような問題に役立つものを厳選してある。諸君を虐めるために無駄にきびしくしているわけではない。
しかしながらこのやり方になじむ学生はそう多くない。だが受講してみて本当に使えるようになったという学生も少なからずいることも確かである。一応この講義の位置づけとしては、高校で「情報」科目を履修した、パーソナル・コンピュータを使用した経験のある学生が主な対象ということになっているが、私の心づもりとしては、初心者でもわかるような、しかしかなりハードな授業という位置づけである(初心者が受講するにはかなりの覚悟が必要であるが)。もちろん経験者にとってもよい復習となるだけでなく、新たな技巧や知識の修得の機会となるだろう。
とはいうものの、やることはWordやExcelを使ったものに限られるわけであるし、初心者の少し上をターゲットとした講義であるから、WordとExcelについてある程度の知識がある学生にとっては既知のことばかり教えられることになる可能性がある。それがいやな学生は別の情報処理科目を履修すべきだろう。
なお、この情報処理I(Windows入門)は、05学則、10学則の学生を対象として本年度は開講されるが、来年度以降は開講されないので注意されたい。
講義の全般的な内容は次のとおりである。
授業内容の項目に記したように、私の授業の進め方はハードである。私の授業の進め方や話し方について違和感を感じる学生は少なからずいる。私のキャラクターは以上の文章からもある程度予想できると思うし、第一週目に出席することで間違って履修してしまうということはなくなるはずである。この文章をよく読み、必ず第一週目に出席をして話をきいた上で、履修するかどうかの判断をして欲しい。
なお、この講義を受講するためには、インフォメーション・テクノロジー・センター(ITC)のアカウント、ならびにkeio.jpのアカウントを使える状態にしておく必要がある。ガイダンス期間中に行われるネットワーク活用ガイダンスにおいてこれらのアカウントの利用についての説明があるので、ネットワーク活用ガイダンスにも必ず出席すること。
成績評価は提出されたレポートに対する評価に基づいて行われる。