津田 眞弓


個人基本情報
氏名:
津田 眞弓[つだ まゆみ]
職位:
准教授
研究室:
日吉キャンパス来往舎・内線番号 31425
略歴:
1987年 日本女子大学 文学部国文学科卒業
1995年 日本女子大学大学院 文学研究科日本文学専攻 博士課程前期修了
2001年 日本女子大学大学院 文学研究科日本文学専攻 博士課程後期修了
最終取得学位:
博士・文学・日本女子大学
受賞学術賞:
全国大学国語国文学会賞・2006年
所属学会:
日本近世文学会、国際浮世絵学会、日本文学協会、全国大学国語国文学会
教育活動
担当科目(2008年度)
[通学課程]
文学・国語国文・自由研究セミナー。その他、アカデミックスキルズ(教養研究センター寄附講座)
[通信教育課程]
教育方針:
学ぶことを楽しむ、その気づきを与えることができたら本望である。
 受講者の人数、授業の形式で、授業のありようと指導法は変化する。詳細はシラバス参照のこと。
 講義形式は、できるだけ多くの資料を提示、日本文学・日本文化の特質を体感する。
 演習形式は、研究の基礎を学び、自ら工夫する機会を多く持つ。型に従う体験と本人の独創性の両面を鍛える。
 いずれも複数の学部を対象に開講する授業なので、学部を超えた交流ができる場にしていきたい。
 受講者の自主性を大いに重んじる一方、社会人として通用する態度で参加することを求める。
 特に、自分の行いが他の受講者の不利益を生み出してしまうかどうか、よく考えながら行動してほしい。
研究活動
専攻・研究領域:
日本古典文学(近世)。19世紀徳川期小説、特に江戸で出版された絵本類。
現在の研究活動
研究課題名:
徳川期合巻史再構築のための初代歌川国貞の合巻に関する書誌学・文学的調査と研究(科学研究費補助金、基盤研究C)
途中経過及び今後の計画:
 近世後期(19世紀前半)に娯楽読み物の中で圧倒的な出版点数を誇った合巻(ごうかん)についての研究。資料は日本に集中して存在するので、成果は必ず国際的な美術・文学研究に寄与することが予想される。またデザイン性・ドラマ性に富んだ合巻が今日のマンガ・映画・テレビドラマに類する内容をもつことから、一般に対してもわかりやすく研究成果を供して制作等のアイデアの源泉となるように促し、こうした基礎研究を行う意義について、多くの理解を得ることも目的としている。
 現在、合巻挿絵の第一人者であった初代歌川国貞の業績を、全国主要図書館にて調査中。
 さらに、江戸出版文化の流行を生み出した背景についても目を配っている。19世紀前半の長州藩主 毛利斉元を中心に大名の狂歌遊びに注目し、私家版の印刷物(狂歌摺物)を軸に、大名の遊びと商業出版における流行との関連を考察している。
研究課題名:
山東京山の研究
途中経過及び今後の計画:
 合巻最長・最多の作者であった山東京山(山東京伝の弟)の業績を通じて、江戸文化・日本文学を考察する。研究者としての出発点であり、ライフワーク。すでに既発表の著書・論文で、彼の業績や伝記の全容を明らかにしてきたので、今後はより広い視点、もしくは一点に集中するなど、多角的に掘り下げる。
 現在、天保改革の出版統制の影響を受けた『塵塚物語』と『朧月猫草紙』について、それぞれ違ったアプローチで成果をまとめている。
主要業績:
著書
『山東京山年譜稿』(2004、ぺりかん社)
『江戸絵本の匠 山東京山』(2005、新典社)
共著
『山東京山伝奇小説集』(高木元編。略伝、翻刻・解題、参考文献担当、2003、国書刊行会)
『源氏物語の変奏曲』(鈴木健一編。『偐紫田舎源氏』担当、2003、三弥井書店)
論文
「山東京山伝記考―大名家とのつながりを中心に」(2000.1、近世文芸72)
「〈教訓〉甘口の教訓という娯楽」(2006.6、江戸文学34)
「歌川国芳画『朧月猫草紙』と猫図」(2006.7、浮世絵芸術152)
「山東京山作『朧月猫草紙』にみる合巻の本分と戯作性」(2006.11、江戸文学35。この号の共同監修)
「世話物語への挑戦―十九世紀草双紙の文体」(2007.11/12、文学8巻6)
その他
講演「柳桜亭 江戸廼花也の正体―大名の狂歌遊び」(「役者絵とその周辺」、2008.1、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館)
閲覧者へのメッセージ:
 日本らしさとは何か。これを考察する授業にしていきます。
 江戸文学は古典文学の最後に位置して、それまでの文学的流れがすべて集約されています。一方、近現代の日本を用意した江戸時代の様々な要素が詰め込まれています。閉ざされた空間で、日本独自の工夫によって発展させたという点でも、日本らしさを考える入り口としてふさわしい資料群なのです。
 ここしばらくは、外国から注目されることの多いマンガやアニメを意識して、市場経済の商品としてもっとも広く読まれた商業文芸を中心に、視覚的要素を重んじる日本文芸の特質を理解する授業をしていきます。また経済学部にちなんで、食品偽装の問題やブランド力の構築など、今に通じる大きな示唆に富んでいる日本初の経済小説『日本永代蔵』を読み、「銀(かね)が銀を溜める世の中」で生き抜く先人の心に触れます。
 授業を通じて、自分の言葉で日本らしさを説明する材料をたくさん提供できたらと願ってます。
 研究文献を読むことも大切ですが、ぜひ現物に触れて五感に刻み付ける体験もしてほしいと思います。今ならまだ、実際に手にとって200年前の人々と同じ紙面を眺めて、視覚的楽しさ、柔らかな感触などを共有することが比較的簡単にできます。わたしの授業に限ったことではありませんが、ぜひ大学というアカデミックな場、とりわけ慶應義塾大学という大量の資料を擁する場にいる利点を、最大限活かす勉強をしてください。