福山欣司


個人基本情報
氏名:
福山欣司[ふくやまきんじ]
職位:
准教授
研究室:
日吉キャンパス第2校舎
略歴:
1987年:東京都立大学大学院理学研究科修士課程修了、
1987年:慶應義塾大学経済学部助手、
1995年:助教授
最終取得学位:
博士(理学)東京都立大学
受賞学術賞:
所属学会:
日本爬虫両棲類学会、日本生態学会、Society for the Study of Amphibians and Reptiles他、
教育活動
担当科目(2003年度)
[通学課程]
生物学、自由研究セミナー、経済と環境
[通信教育課程]
なし
教育方針:
【生物学について】
授業の方針:
 現代社会は地球温暖化、環境ホルモン、SARSなど科学的な知識を必要とする様々な課題を抱えています。また、遺伝子工学の知識や環境リテラシーなどは21世紀の企業活動には不可欠なものとなりつつあります。自然科学の知識や科学的な考え方を身につけることは、本人のためだけでなく社会の発展にも不可欠だと考えています。そこで私の担当する生物学的な知識と考え方を学生自ら学ぶことの出来る授業を目指しています。しかし限られた時間の中で複雑化高度化した現代生物学の全域を学ぶことは事実上不可能ですので、この生物学では21世紀の中心課題の一つである地球環境問題に関係する生物学の修得を目的としています。
 なお、生物学は総合教育科目(数理・自然系)として開講されていますが、通常の総合教育科目と異なり、講義と実習が隔週で繰り返される授業形式になっています。一般に文系学生は自然科学にコンプレックスを持つ傾向にあり、自然科学系の授業を避ける傾向にありますが、自らが体験して学ぶことのできる実験や観察が導入されることにより、文系学生に自然科学に対するコンプレックスを和らげる効果が期待できます。
授業内容:
実習では身近な生物を顕微鏡で観察したり、土壌を分析したりすることにより普段気付かないでいる多様な生物の世界を理解します。講義では印刷資料や映像を使って生物多様性や生態系などのレクチャーを行います。さらに、新聞やテレビなどで取り上げられる科学時事問題の中から同じテーマに関心を持った者同士でグループを作って研究発表会を行っています。各グループのプレゼンテーションは、履修者全員で採点し、その評点はそのままこの生物学の成績に組み入れています。自分たちの発表が他の履修者によって評価されるという仕組みは、発表する側にはやる気を、聴く側には真剣さをもたらします。
評価方法:
試験だけでなく講義や実習全体で総合評価をしていますが、その評価基準は出来る限り公開しています。なお、基準については講義要項に記載されています。
授業に関する自己点検:
5年前から毎年、最後授業終了後に履修者全員にアンケート用紙を配布し、この授業に関する感想と改善すべき点を記入して貰っています。昨年度のアンケートおもな内容と集計結果は下記の通りです。なお、アンケートは無記名形式で2002年度は履修者126名中117名(93%)から回答を得ました。

福山の生物学(2002年度) 授業内容に関するアンケート
A.この福山の生物学(講義と実習両方を含めて)は有意義な授業でしたか。
1.良かった 40名(34%)
2.おおむね良かった 54名(46%)
3.普通 22名(19%)
4.あまり良くなかった 0名(0%)
5.受講しない方が良かった 1名(1%)

B.講義はあなたにとって有意義でしたか。
1.有意義だった 36名(31%)
2.ある程度有意義だった 70名(60%)
3.あまり有意義でなかった 9名(8%)
4.まったく有意義でないかった 0名(0%)
5.その他 2名(2%)

C.講義のレベルは適当でしたか。
1.適当 110名(94%)
2.難しすぎ 2名(2%)
3.易しすぎ 4名(3%)
4.その他 1名(1%)

D.講義のやり方や資料の使い方についてどう感じましたか。
1.妥当 57名(49%)
2.ある程度妥当 52名(44%)
3.改善の余地あり 7名(6%)
4.大いに改善すべき 0名(0%)
5.その他 1名(1%)

E.全体の実習内容についてどう感じましたか。
1.良かった 81名(69%)
2.普通 35名(30%)
3.つまらなかった 1名(1%)

F.成績の評価方法は妥当だと思いますか。
1.妥当 73名(62%)
2.ある程度妥当 36名(31%)
3.改善の余地あり 8名(7%)
4.大いに改善すべき 0名(0%)

全体としてはおおむね良好な評価をしてくれていますが、一部に改善すべきと答えてくれた履修者もいます。改善すべきと書いてくれた履修者には、どういう点を改善すべきか意見を書いて貰っていますので、指摘を真摯に受け止め、次年度以降の授業に生かしていくことにしています。
【自由研究セミナーについて】
授業の方針:
少人数を対象とした演習方式の授業です。大学は定められた科目を修得していくだけではなく、知の遊び場としての役割を果たすべきだと考えています。経済学や生物学といった学問としての体系や学ぶ方法が確立された科目では得ることの出来ない知の領域を学生に伝える場がこのセミナーだと考えています。様々な内容の授業が開講されていますが、私は「モノに対する知的なこだわり」が人の知的な幅を広げることになると考え、授業をいます。
授業内容:
タイトルを「カエル学入門」としました。1年間「カエル」にこだわる授業をしています。一般的にはカエルのイメージは、気持ち悪い、汚い、などマイナスであることが多いようです。それは何故なのでしょうか。また、嫌われる一方で、私たちの生活や文化の中にカエルは頻繁に登場します。子どものオモチャから、日用雑貨、文具、広告、オブジェ、絵画、写真、書物、音楽、などさまざまな局面で私たちはカエルと遭遇しています。マイナスのイメージのある生き物が頻繁に登場するのはなぜなのでしょうか。カエルのイメージがどのように扱われているかを実際の例に当たりながら、人とカエルとの関係について考えるという授業です。
評価方法:
少人数教育の利点は、学生の名前と顔が一致するところにあります。1年間の学習を通して、履修者の出席数や努力量を中心に評価しています。
授業に関する自己点検:
形式的な評価方法が馴染まない授業ですので、最後の授業で改善すべき点を学生と話し合います。
【経済と環境】
授業の方針:
経済と環境は、三田の経済学の専門家と日吉の自然科学系の教員がオムニバスで行う基礎教育科目です。21世紀が環境の世紀といわれるように、現代社会は地球環境問題の克服を最優先課題として取り組まなければなりません。経済学においても環境の保全と経済活動を両立させるための様々な方策が考えられています。この授業はより専門的な環境関連の経済学へのアプローチ的な役割を果たします。今年度は、杉浦章介教授との合同授業ですので、詳しくは杉浦教授のページを参照して下さい。
授業内容:
指数関数的増加特性・生物多様性・自然システムという3つのキーワードで地球環境問題の構造と問題点を解説し、後半の経済学が具体的に取り組むべき課題が把握できるようにしています。講義回数が限られるために概略だけに留まる内容もありますので、その都度自分で学習できる文献や教科書を紹介しています。なお、後半部分については杉浦教授のページを参照して下さい。
研究活動
専攻・研究領域:
動物生態学、保全生態学
現在の研究活動
研究課題名:
両棲類の保全生態学的研究。
途中経過及び今後の計画:
現在、世界各地で両棲類個体群の急激な減少が続いていると言われています。最近の私たちの研究によると日本でも両生類は減少傾向にあることが明らかとなっています。減少の原因はまだ十分に解明されたわけではありませんが、日本では多くの両生類が水田環境に依存しているために、水田の環境変化が両生類の生息にどのような影響を与えるのかを明らかにすることが両生類の保全に重要です。そこで、現在、谷戸田環境の回復と両生類の個体群密度の変化について調べています。
研究課題名:
都市緑地を対象とした地域自然および環境教育に関する研究。
途中経過及び今後の計画:
都市部の緑地は開発の影響を受けやすく、そこに生息する動植物の生態調査は急務となっています。また、都市緑地は自然環境教育の場としての機能も期待されています。こうした観点から見ると慶應義塾大学の日吉キャンパスに残された雑木林を中心とした緑域は格好のフィールドです。そこで、現在、都市部で絶滅が心配されている貴重植物の生態学的調査を行うとともに、文系大学生を対象とした自然環境教育のプログラムの開発を行っています。
主要業績:
単著論文
Spawning behaviour and male mating tactics of a foam-nesting treefrog,Rhacophorus schlegelii. Animal Behaviour 42:193-199. 1991.

共著論文
都市近郊の雑木林におけるシュンラン群落の長期調査(3)個体の成長。慶應義塾大学日吉紀要・自然科学、33:57-64、2003年。

日本の両生類ー現状と将来ー、千葉県立中央博物館自然誌研究報告。 特別号3、千葉県立中央博物館、62p。2000年。

自然科学に対する経済学部学生の意識調査。慶應義塾大学日吉紀要・自然科学、15:117-141. 1994年。

都市近郊の雑木林におけるシュンラン群落の長期調査(1)個体数の変動と盗採の影響。慶應義塾大学日吉紀要・自然科学、25:64-72. 1999年。

都市近郊の雑木林におけるシュンラン群落の長期調査(2)開花個体数と開花率。慶應義塾大学日吉紀要・自然科学、26:70-77、1999年。

Age determination of the stream frog, Rana sakuraii, by skeletochronology., Journal of Herpetology 29:625-628. 1995

Factors affecting breeding activity in a stream-breeding frog, Buergeria buergeri. Journal of Herpetology 26:88-91. 1992.

Testes size and breeding systems in Japanese anurans with special reference to large testes in the treefrog, Rhacophorus arboreus (Amphibia : Rhacophoridae). Behavioral Ecology and Sociobiology 29:27-31. 1991.

著書(分担執筆)
生態学事典(巖佐 庸・松本忠夫・菊沢喜八郎・日本生態学会 編集)、共立出版株式会社、708ページ、2003年。

日本動物大百科5両生類・爬虫類・軟骨魚類(日高敏隆 監修)、平凡社、46-51。1996年。

閲覧者へのメッセージ:
一般の方へ
私は両生類(おもにカエル類)の行動や生態について研究を続けてきました。学術的な研究成果は学会発表や論文、著書などで社会に還元しています。その一方で、フィールドワークを伴う研究に関わっている多くの研究者は自分の研究対象生物が各地で消えゆくことに危機感を持っています。両生類の場合も例外ではなく、急速にその姿が消えつつあります。現在、研究者を含む両生類の専門家と一般の市民による日本産両生類の保全に関するボランティア組織を立ち上げています。カエルやサンショウウオの減少に関心を持ちの方は、是非、下記のホームページにお立ち寄りください。
http://www.hc.keio.ac.jp/~fukuyama/frogs/index.html
慶応大学を目指すあるいは在籍する学生の皆さんへ
文経法商の四学部の1、2年生の皆さんが通う日吉キャンパスは36haを越える面積があり、その中には1300種以上の生物が暮らす豊かな緑地があります。都市の緑地が急速に消えつつある現在、この緑地は都市に暮らす生物にとって重要生息地となっています。また、キャンパスという立地条件から自然環境学習の拠点としても重要な意味を持っています。しかし、残念なことにキャンパスの地形や校舎群の配置の関係から多くの学生がその存在に気付くことなく三田キャンパスへ進級していきます。慶應義塾の財産の一つでもあるキャンパスの自然を有効に利用するためには学生の皆さんの積極的な関心が大切です。ホームページを開設してありますので、是非、ご覧下さい。
http://www.hc.keio.ac.jp/~fukuyama/hiyoshi/index.html