研究スタッフの最近の研究を紹介するコーナーです。
2001年度の義塾賞は，『上海ネットワークと近代東アジア』（東京大学出版会，2000年刊）の著者である古田和子教授に贈られた．
古田教授の著書が，19世紀後半の東アジアに展開した交易と交流の様相を「ネットワーク」という概念を用いて捉えた意欲的な研究であることが，授賞の理由としてあげられている．事実，同書は，東アジアの交易の中心であった上海の役割に焦点をあてて，当時の交易の実態について堅実な実証をおこなうとともに，その態様の大胆な理論化を試みた研究として高い評価を広く受けている．
経済学部で現に学びつつある諸君には，専門研究書である同書を十分に読みこなすことは難しいかもしれない．しかし，少し背伸びをして同書を通読すれば，19世紀後半の東アジアの経済について多くのことを学ぶことが出来るだけでなく，現代の歴史研究が，史料の読解という古典的な手法のみでなく，経済学や社会学の理論，さらには統計学といった多様な学問に支えられておこなわれていることをも知ることが出来るだろう．